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アブダビ・テストでの感触と来期–[STINGER]特別企画:新井代表に訊く3/3

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まずはQ3を走ること。最初の、そして明確なターゲットが見えた。

2/3からつづく)

◆アブダビ・テストでの感触

—-これまでの中で、最終戦のアブダビGP直後のアブダビのテストで、99周をノントラブルで走ったというのは、マトモに走れた最初のような気がしますが。
新井:そんなこともないんですが、シーズン中には、ちゃんと走ったテストもありましたから。

—-でも、全体的に速くなかった気がします。例えば、アブダビGPでも、フリー走行2でアロンソが9番手で、Q3に行けるという期待をしましたが、結局Q1で敗退しました。
新井:セクター1、セクター2と自己ベストできて、セクター3でパンクしちゃったので仕方ないですよね。ああいう状況もレースだな、と。マクラーレンを含めてチーム全体も湧いていたので全員が相当ガックリでしたね。

—-アロンソのフリー走行9番手は、トップとの差が1秒なかった。そこまでは、最小でも1.8秒くらい差がありましたから。
新井:それはチーム力の話で、エンジンだけではないので、ク

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ルマを速くする部分でエンジンの寄与度とアブダビで上がって行っているのとは、大分違うと思います。我々の中でも分けて考えています。

—-ハンガリーの予選でアロンソがトラブルで走れなかったりしています。それは開幕戦でケビン・マグヌッセンがフォーメーションラップでトラブルがでてスタートできなかった状況をずっと引きずっているイメージがあります。
新井:一度整理していただければ、事実はそうなっていないので(笑)。

—-イメージとしてはそう伝わっていると思います。で、アブダビで、やっとまともになった、というような(笑)。
新井:我々の中では、そうは感じていません。

—-マクラーレン・ホンダを応援したい気分からすると、アブダビでいい方向が見えたので、いい気分でオフを迎えられて、成績を期待できるかな、と。しかし、それはホンダのパワーユニットが突然進化したわけではない、ということですね。
新井:そうです。だから、何度も言うように、パワーユニットを変えなくても、あれだけ変わる影響度がある、ということです。なので、セットアップをすることがすごく重要だ、ということと、外すととんでもないことになる、ということですね。例えば、モナコのウィリアムズが、あり得ないくらい速くなかった。メルセデスのエンジンを積んでいてあれだけ後ろの方(14番手と17番手グリッド)にいるわけですから。本人たちもなにをしていいのか分からなくなる。レースでは、3日間の中で、最適化していくことがすごく重要ですよね。

—-もちろん、パンクしたり、マクラーレン側の問題もあるわけですが、そこに、パワートレーン絡みのトラブルが”また出たのか”というイメージなのですが、アブダビでも、ホンダのパワーユニットはあまり変わっていない?
新井:それはデータを精査していただければそうではないことがわかると思います。

◆まずはQ3に残る

—-逆に、メルセデスが100とするとホンダはどの辺りですか?
新井:それは自己採点になってしまう(笑)。現実問題として、1年間19戦闘って、Q3に一度も入っていない、ということは、まだ、点数を付けられるレベルに行っていない、ということですね。チームとして、予選でトップ10に入れないわけですから、現実問題で言えば、そこをまず、Q3にいけるようにする、というのが2016年にやっていかなければならないことだと思います。

—やっと具体的に見えました(笑)。
新井:ここで、来年表彰台に行きます、と言っても、なに言ってんの、と思う人もいるでしょうし、そんな
に世の中甘くないと思っていますし、総合力を発揮するため
にも、安定したパワーユニットを提供して
走行時間をきちんとこなしてクルマのレベルを上げていく時間がすごく重要で、どこに目標を置くかというと、Q3もいか
ないのに、いきなり優勝ねらいます、という話はないと思っていて。シーズンが始まる前は、フロントローというか、前の方にいたい、という気持ちはありましたが、現実問題とて、言っている時点で、なかなかそこに技術レベルが到達していない、というのはあったけれど、応援してくれている人に対して、”全然だめなんだ”、と思われてしまうと困るので、ある意味景気のいい表現をせざるを得ないというか、自分たちを鼓舞するためにも、目指すところはとそこなのだ、ということを、ずっとチームの中で共有していたわけです。

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–なるほど。
新井:すごく悔しいわけです。これだけ差がある、それをどれだけ早く埋めるかと言うことをやってきたわけで、1年間やってきてまだ埋まっていないこともわかってきて、そうすると、2016年の豊富、といわれて、”ポディウムに行ききます”とここで言うと、1年間闘ってきてわかっているのにまだ言うのか、というのもあるし、19戦やってきてかなり前の段階で身に沁みているし、ひとつでもポジションをあげたいと思っていますが、よくなっていることは我々も表現していきますが、いきなり台の上、というようなことを言うと、応援してくれる人たちを失ってしまうと、今は思っています。

◆デプロイを切れさせないことが最重要

—-エンジン出力、信頼性、デプロイの中で、一番足りていないのは?
新井:
三つもとだけれど(笑)、それぞれ1/3と思います。

—-エンジンはいいところにいっているけれど、出力を高めると信頼性が、とか。
新井:もちろん、出力を上げてくると、いままで大丈夫だった部品が大丈夫ではなくなる、ということはあります。ただ、一番観ていてお客さんをガッカリさせるのはデプロイの問題ですよね。直線で、120キロワットの出力が、(貯めた分を使い切ってしまって)ゼロになっちゃうわけで、例えば、300馬力に160馬力を追加できるときに、その160馬力が使えない状況になるわけですから。もうちょっと馬力は高いですが、そんなことですから、いとも簡単に抜かれてしまう。

—-ラップタイムにしたら、それほど大きな差にはならないけれど、その瞬間を見ると、大差に見える。
新井:ですね。観ているお客さんを失望させてしまうし、分かりやすいので、ぜんぜんダメという風に映る。でも実際にラップタイムで言うと、そんな差はないのだけれど、象徴的に分かりやすいので。お客さん目線でいくと、デプロイが切れない、というのは、すごく大事なことだと思います。もちろん、オーバーテイクするにも、デプロイが切れてしまうとまったく歯が立たないですから。

みっつをちゃんとやらないとレースにならないと思っています。さっき、走れない感じがしていると仰ったのは、信頼性の問題で、少なくとも、トラブルでセッションを止めてしまうのはよくないし、まず、そこですね。出力の話もありますが、デプロイをしっかりしないと、と思います。


—-まずはQ3となると、もの足らないと思うかもしれないですが、もともと10台しか残れないわけで、それがどんなにハイレベルの話が理解されるといいですね。
新井:コンマ何秒の差で振り落とされますから。本当はそこを伝えたいですね。

—-生産車とF1の違いは、兵器と同じく、コストではなくて性能が圧倒的に優先していることだと思います。ピストンひとつとっても、ピカピカに磨かれているのは、見たら誰でもわかると思いますが、なぜそうなのか、ことあるごとに、新井さんからそのことを伝えていただければと思います。
新井:時計のように精密ですからね。パーツひとつひとつの精度も圧倒的に高いですしね。

(”インタビューを終えて“につづく)


[STINGER]山口正己
photo by HONDA /  [STINGER]
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