トロロッソ「STR7」 解説
新しいルールによって規定されるテールパイプの位置が空気の流れを邪魔をするとして、マクラーレンはU字形サイドポンツーンを廃止した。一方、トロロッソは規則変更が有利に作用するとして、サイドポンツーン下部を全長にわたって深くえぐった処理を継承。その他のエリアにも斬新なアプローチを取り入れて、独自開発3作目となるSTR7を完成させた。2011年型マシンの基本シルエットを継承したマシンが多いだけに、トロロッソの積極的なアプローチが際立つ。
フロア後端からテールパイプが消えたので、フロア直上に形成された大断面の流路を邪魔する物がなくなった。テールパイプはサイドポンツーンの後端、上下ウィッシュボーンの間にあり、わずかに上を向いて配置されている。持ち上がったサイドポンツーンに必要な機器を収めなければならず、重心が上がってしまうデメリットはあるものの、リヤのダウンフォースを増大させるためのアプローチとしてはクレバーで、デメリットを補って余りある効果が得られそうだ。
例によって段付きノーズだが、V字断面のモノコックをフラットなノーズにつないでいるため、モノコックとノーズの境界は不細工な「段」ではなく、バルジ状になっている。ドラッグ(空気抵抗)面では、この方が有利だろう。低いノーズの下に大型のL字形ターニング・ベーンを装着し、フロア下に向かう空気をきっちり制御する意図が見てとれる。
インダクションポッド周辺の処理も過激だ。ポッドの下を大きくえぐってピラーで支える手法は他のチームにも見られるが、STR7の場合はえぐり具合が半端ではない。突き出したポッドを2本のピラーで支える構造。ロールオーバー構造に課せられる厳しい静荷重テスト基準を満たすため、ピラーには金属が採用されているに違いない。インダクションポッドの下部にはKERSあるいはギヤボックス・オイルクーラー用のエアインテークが見えるが、開口部はかなり大きめである。
トロロッソは2011年のシーズン当初からピラーレス構造のリヤウィングを採用している。2012年のSTR7も同じ構造を受け継ぐが、DRSの作動機構を収めるケースを大幅に小型化した。大から小まで、過激なものから地味なものまで、STR7にはさまざまな進化の跡が確認できる。
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