アイルトン・セナはなぜ、すごいドライバーと言われるのか?
アイルトン・セナと一時代築いたレジェンドのひとり、三度ワールドチャンピオンを奪っているネルソン・ピケは、雑誌のインタビューに答えて、セナについてこう言った。“女の子に興味がない”と。雑誌には、「ピケはセナを同性愛者だと言った」と書かれていたとか。しかし、ピケが言いたかったのは、それくらい常にレースのことを考えている、という意味だった。
まず、セナのポテンシャルはそこが一番。そして、F1の本場ヨーロッパからみれば貧しい国であるブラジルに勇気を与えるという役目を自分に課していたからでもあったかもしれない。ブラジルのファンは、だからそういうセナに熱狂した。
そして、レース運びは、常に勇猛果敢。たとえば、セナは追い越しがうまいといわれるけれど、追い越しのテクニックがうまいのではなかった。追い越しの腕前は、トップドライバーならそう変わらない。しかしセナは、相手のバックミラーに自分が映った瞬間に、“とにかく抜く”。これを繰り返すと、相手には、「セナはどんなときにも抜いてくるヤツだ」、というイメージがインプットされる。セナはそういうことまで計算していたのではないかと思えるレースを展開していた。
クルマを感じる感覚の鋭さと凄まじく明晰な頭脳、そして執念とも言える勝利へのこだわりがあったから、速かった。その姿勢が1994年の悲しいアクシデントを呼び込んでしまった、とも言えるのかもしれない。
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Photo by WILLIAMS F1 TEAM / LAT Photographic