恐いのはオールージュの先
今週末は、ベルギーGP。舞台は、難攻不落のスパ-フランコルシャン。スパといえば、オールージュ。心臓破りの高速コーナーだ。
ストレートを下り、“底”から一気に駆け上がる。300km/hで右に曲がった先は、空しか見えない。実は、オールージュが名物になっているのは、駆け上がるオールージュそのものではなく、その先の左コーナーが恐いのだ。
オールージュを右に曲がって駆け上がり、左に切り返すそこは、その先がフラットになっているから、盛り上がった形になっていて、一瞬、空中に浮かぶ感覚になる。Gが抜けるとタイヤのグリップが下がるから、できればスピードを落としたいけれど、そこでアクセルを緩めると、バックストレッチのストレートの加速が伸びない。かくてエンジンパワーだけでなく、シャシーの性能はもちろん、ドライバーの心臓の頑丈さも、オールージュ区間の攻略に必須になる。
この区間と、コース中盤のワインディング区間も、奈落の底に突き落とされるような下り勾配も心臓破り。高速でのコントロールが効くマシンが必要だ。
ちなみに、今年5月のWECの予選最速タイムは、1分53秒658。去年のF1のポールポジションは、1分46秒744。今年は、1分40秒前半の先陣争いになりそうだ。
1周7kmと、F1GP中最長の距離を持つコースは、不安定な天候でも名高い。今年は、メルセデスとフェラーリが面白いドラマを演じてくれそうだが、マクラーレン・ホンダのストフェル・ヴァンドーンのホームコースであることも覚えておいて、セッションの開始を待ちたい。
[STINGER]山口正己
photo by HONDA