オリジナル リリース-スクーデリア・トロ・ロッソ【韓国GP(水)】
舞台は韓国。月へ行くわけではないのだから、取り乱さないように…
トロ・ロッソは韓国GPの開催を全面的に支持しており、参加できることをたいへん誇りに思っている。しかし、F1関係者には保守的な者も多く、新たに開催されるこのレースにさまざまな不安が表明されている。食事や宿泊施設、サーキットへ往復する道路の状況などを心配している人が少なくないということで、サーキットの完成度にまで疑問が投げかけられている。しかし、新しくF1カレンダーに加わるレースだけではなく、最初の世界選手権が開催されたシルバーストンもまた、さまざまな問題を抱えていることを指摘しておかなければならない。
ぎりぎりに舗装が完成した路面についても、さまざまな憶測が飛び交っている。こうした心配は、ヨーロッパのレースではあり得ないというわけだが、20〜30年前には歴史と伝統を誇るスパ-フランコルシャンのレースが、路面の崩壊によって中止されてしまったこともある。
ガレージの設備に未完成のカ所があることから、F1に必要な水準が確保されていないのではないかと心配する関係者もいる。少なくともメルボルンやサンパウロのレベルに達していなければ困るというわけだ。しかし、フランツ・シューベルトの最高傑作と言われ、世界的に最高の評価を受けている交響曲第8番が示すとおり、未完成なものが必ずしも優れていないとは限らないだろう。時間をかければかけるほど、見事な物が出来るという考え方も成り立つ。世界でもっとも有名な教会のひとつであるバルセロナのサグラ・ダ・ファミリアの建設は1882年に始まったが、完成するのは予定どおりに作業が終っても2026年ということだ。
予想外の行動を獲ることがある北朝鮮の隣の国へ行くこと事態、危険なのではないかという気の小さい人もいる。しかし、ほんの数十年さかのぼれば、隣国という関係がギクシャクしていたのはヨーロッパの国々も同様だ。
スクーデリア・トロ・ロッソが宿泊するモクポは非常に魅力的な海岸の街だが、最近公開された『モクポ・ハングブ』という映画には、組織暴力の温床として描かれていた。
韓国でどのような応対を受けるかを不安視する向きもあるが、逆に韓国の人たちからは、ヨーロッパ人がちょっとしたことで興奮する傾向にあると警戒されていることを憶えておいていただきたい。「ヨーロッパ人は反応が大げさで、韓国人が気にもかけないことで気持ちを昂らせることがある。これはヨーロッパ人が感情を率直に表現する文化の中で育った結果だが、初めて出逢った者同士が、まず天気を話題にするのは、英国の空模様がほとんどつねにすぐれないためだろう。気候に恵まれた韓国のような国に住んでいると気づかないようなことに、イギリスの人たちは感動する」こんな記述が韓国の教科書に見受けられるのだ。
ともかく、取り乱すことなく、未知の国への旅を楽しんでいただきたい。すくなくとも、韓国で初めて開催されたF1のレースに立ち会ったということができるだけでも、素晴らしいことだ。サーキットからホテルへのバス移動には、たしかに時間がかかるが、それでも英田サーキットでパシフィックGPが開催された時ほどではないだろう。