レッドブル・エアレース初の日本人ウィナー室屋義秀インタビュー1/4
6月5日に、幕張で行なわれたレッドブル・エアレース2016の2日後、優勝トロフィーを携えた日本人初のウィナー室屋義秀に話を聞いた。初勝利の興奮を脳裏にたたき込んでおくために。
(その1)
6月5日15時30分、フライトを終えてハンガーに戻った室屋は、優勝を知って涙を流した。
「いろんなことがパッと思い出されて、その場で、いろんな人と、これまでを含めて共有できたということが、極めていい瞬間でした」
室屋は、熱戦を振り返った。
前日の予選は強風と高波でフライトが中止になった。大会のアンバサダーとして、心中穏やかでない状況で日曜日を迎えた。
「特にラウンド of 14の時は横風も強くて難しいコンディションだったです。それからだんだん風が止んできて、後半になると、風が静まって、少し飛ぶコースも変わってくるような、変化していく状況だったので簡単ではない感じでした」
結果からすれば、風向きが、徐々に室屋の方に向き始めたと言ってよかった。
「荒れた方が技術差が出易いので。そういう展開の方がいい結果が出ると思いました」
室屋は強気の姿勢だったことをコメントした。
「1戦だけ勝つということは、まぁ、たまたまある。例えば、相手が病気で飛べないとか、そういうことが2つくらい重なると、優勝はできなくても前にいくことはできると思います。でも、年間を通してとなると、そういうマグレではシリーズ3位には絶対に入れない。3位は実力のあるチームしか入れないですから。そういう意味では、これから本当の底力が試されていくんだと思います」
次の目標は、シリーズチャンピオンだ。室屋義秀は初勝利をつかむことで次にステップを進めた。
◆室屋にとっての”チーム”
F1でもドライバーだけが闘っているのではなく、闘いはチーム戦であるとよく言われる。以前は、”スタートしたら後はドライバーに任せている”という言葉を口にする監督がいたが、無線やテレメータリングの進化で、闘いが高度になった現在では、ドライバー任せでは通用しない。エアレースもまったく一緒だが、室屋は、”チーム”に対して、独特の考え方を持っていた。
「ボクは、こういう目立つ場所にいるのでしゃべれていますが、実際に飛行機を飛ばすということは、一人ではできないし、チームというのは、現場にいてテレビに映っているメンバーは当然として、そうでない地元のメンバーもいるし、それを支援してくれる人もいる。直接的ではなくてもご飯を作ってくれる人もいれば、こうやって取材をしていただくこともそうですし、その背景にいるファンの人たちも含めて、そういう全部を含めたチームだと思うんです。
それが全部集まってこないと、世界一って取れないと思ってます。日本一は取れるかもしれないけれど、世界一というのはなかなか届かない世界かな、という実感はしています。
ですから、そういう意味で、日本でこうして開催されて、チームメンバーだけではなく、同じシャツを来ているひとだけではない、そういう意味でのチームが機能したんだと思います」
その思いが通じてか、幕張で室屋が勝った時はもちろん、ラウンドで好タイムを記録するたびに、観客席は大きくどよめいた。
photo by redbull / [STINGER]