WRC2で勝った勝田貴元を覚えておこう
2018WRC第2戦のラリー・スウェーデンのWRC2クラスに優勝した勝田貴元は、ラリーファミリーの一員として育ったことは知られたところだ。
祖父の勝田照夫氏は
、1970年代中盤から、現在ラリー・グレートブリテンとなった通称“RACラリー”にドライバーとして連続チャレンジを行ない、並行して、MASC(モンテカルロ・オートスポーツ・クラブ)でラリーイベントを主催。警察の前をスタートする奇抜なアイデアのMASCラリー主催など、ラリーの一般への理解を高める活動を行なってきた。現在の新城ラリーもその流れの中で展開し、ファン拡充に大きな貢献をしている。
照夫氏の息子で貴元の父である勝田範彦は、なんと妊娠3カ月のときに母親の胎内でラリーに参戦したという極めつけの血統の持ち主。その生い立ちを活かして(?)、貴元が生まれた1993年のラリーデビュー以来、トップに躍進、8度の全日本タイトルを獲得して一世を風靡した。
その父の祖父と父の血を受け継いだ貴元は、カートから4輪に進んだとき、ラリーではなくフォーミュラを選択したが、それはWRCを視野にいれた高速でのドライビング感覚を身につけるためだった。
カートで基礎を身につけ、2017スーパーGTチャンピオンの平川亮たちとトップを争い、ヤマハのワークスとして活躍の後、2012年にTDP(トヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム)に選抜され、2015年にラリー転身を表明、TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラムの認定を受けて本格てきにラリー人生をスタートした。
今回のラリー・スウェーデンは、スノーラリーでスピードが高くないように思われがちだが、ピンスパイクの強烈なグリップで、WECの中で最速と言われる超高速ラリー。その条件下で、3日目に後退したものの、そこでリズムを乱すことなく、逆転して優勝したことは、WRCの世界を大いに驚嘆させた。
さらに、優勝争いしたティディマンドは、今年からトヨタ・ワークス入りしたオット・タナックたちとWRC2クラスでトップを争ってきた百戦錬磨の強豪であり、VWがバックアップし、リストリクター系の差があるシュコダ乗る。そのティディマンドを、量産のフォードR5で破ったことが、本場ヨーロッパを驚嘆させた大きな理由だった。
豊田章夫社長が標榜する「日本車で日本人がWRCを闘う姿」に大きく近づいた勝田貴元の今後に注目したい。
[STINGER]山口正己
photo by GAZOO RACING