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スーパー・フォーミュラをもっと面白くするオーバーテイクボタンとソフトタイヤ

 

22日に鈴鹿サーキットで2018スーパー・フォーミュラ・シリーズが開幕した。TEAM MUGENの山本尚貴が感涙の勝利を飾り、あちこちでハイレベルのバトルが展開する面白いレースだった。しかし、どこか、喉の奥に小骨が刺さったようなもどかしさもあった。

山本のベテランらしいレースも素晴らしかったし、関口雄飛の追い上げも最後まで手に汗握らせた。

Kondoレーシングやリアルレーシングの2ストップ作戦もレース後半を楽しみにしてくれた。小林可夢偉を1-2コーナーで仕留めた山下健太の鋭い走りも、厳しくなったタイヤでギリギリまで阻止した可夢偉の腕前も見事だった。だが、そういうレベルにオーバーテイクボタンとソフトタイヤが追いついていないことを感じるレースだった。

◆抜かれないオーバーテイクボタン
オーバーテイクシステムは、追いついたドライバーがスイッチを押し、エンジンパワーを一時的に高めて追い越しができる仕掛けだが、これが抜かれる方も使えるというなんとも間抜けなことになっている。

F1のオーバーテイクシステムは、1秒以内に追いつくと、リヤウィングのフラップを寝かせて空気抵抗を減らして前車を抜ける、というものだが、オーバーテイクボタンを抜かれる方も使えるのだ。

使える回数が決まっているので、制限回数を超えれば話は違うが、時には、タイヤがタレで追いつかれた場合には、ブロッキングシステムとしてエンジンパワーを上げられる。これではなんのためのオーバーテイクシステムかわからなくなる。後方車両だけが使えれば、追い越しの場面はもっと増えるはずだ。

そもそも、追い越しを作為的にやらせるのはどうか、という話もあるが、追い越しはないよりはあった方がいい、ということで、その議論はここでは無視しておくが、せっかくのシステムが有効打にならないのでは意味がない。

一説によると、F1のようにGPSによる監視システムを用意するのは予算が足らないから、という理由もあるらしいが、それは人海戦術などでカバーできるはず。JRPに早急に検討してほしいと思う。

◆ロングランができちゃうソフトタイヤ
今回のレースは記念すべき1戦になると思っていた。それは、ソフトタイヤが加わって柔硬2種類のタイヤが用意されるシリーズの開幕戦だったからだ。ヨコハマ・タイヤの努力には感謝すべき快挙と思っていた。

予選の段階で、暖かい気候もあって、ソフトタイヤが最終セクターまでグリップが持たないという話が伝わって、いよいよレースでは、タイヤの使い方がキモになるとワクワクしてスタートを待っていた。しかし、期待は空回りした。

レース序盤、たとえば塚越広大が軽い燃料とソフトタイヤ(←ミディアムの誤り)を履いてジャンプを狙ってトップの山本尚貴の背後に張りついたが、塚越広大は山本尚貴を仕留めることができなかった。赤旗に邪魔された後方グリッドから挽回を狙った松下信治は、早めにタイヤを交換したが、作戦の違う中嶋一貴に引っかかる形で万事休すの状況になった。

二人のケースは、オーバーーテイクボタンの使用規則の改善(後方車両しか使えないものにする)で違う展開になる可能性があった。

しかし、ソフトタイヤが思った以上に長距離を走れてしまうことが判明した。ライフを短くすることで、面白くなるはずと期待したのは間違いだったのだ。タイヤへのストレスの大きな鈴鹿でレースの半分近くを走れてしまうとなると、他のサーキットではもっと長持ちするはずで、ソフトタイヤへの期待は早くも崩れたことになる。

もちろん、タイヤ供給メーカーとしては、長持ちせずに壊れてしまうタイヤでブランドイメージを下げるのは避けたいところだろう。しかし、ならば、ダブルコンパウンドにするのはどうか。10周走ったら硬いコンパウンドが出てきてグリップがた落ち、というタイヤが作れれば、安全面では問題なくライフの短いタイヤができるのではないか。むしろ、それを明確に告知することで、タイヤメーカーがそんなことまでできると見直される?

外野は勝手なことばかり言いたがるが、スーパー・フォーミュラを本質的に面白くしようとするなら、ヨコハマ・タイヤに是非とも一肌脱いでいただきたいところだ。

◆せっかくの音はスタートまでとっておく
もうひとつ、小さいことだが、スタート前のウォームアップ走行では、グランドスタンド前のメインストレートを走行させない方がいいと思う。スタートの瞬間の大音響は、スタートの瞬間までとっておいて、迫力のスタートを演出するようにしてほしい。

最後の確認をしたい? 全チームができなければ条件は一緒だ。そもそもインディ500は、数日前のキャブレーションテストから、いきなりフォーメーションラップ(インディカーではパレードラップ)が始まり、グリーンフラッグが振られた瞬間に時速350km/hの闘いに突入する。

面白いレースのために、できることはまだまだたくさんありそうだ。

[STINGER]山口正己
photo by [STINGER]

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