可夢偉が表彰台に乗らなかった理由・1/2
5日に決勝レースを行なったWEC開幕戦で、ポールポジションの予選タイムが抹消され、1周後れでピットからスタートした7 トヨタTS050 HYBRIDが、素晴しい追い上げを見せて2位に食い込んだ。
しかし、表彰台には、3人のドライバーのうち、マイク・コンウェイとホセ・マリア・ロペスの2人だけが上がり、小林可夢偉の姿がなかった。
チームでは、“エンジニアとレースの振り返りをしていて、慌てて駆けつけたが、すでに国歌斉唱の段階で入場を止められた”としているが、それはそれとして、チームの大きなマネージメントミス。表彰台にトップ3が上がるのは当然の義務であり、それをミーティングをしていて遅れた、というのは通らない。
結果として小林可夢偉は、予選に続いてレースでもペナルティを受け、1500ユーロ(約20万円)の罰金を払うことになったが、エンジニアと話をしていたならチームが負担することになりそうだが、いずれにしてもなんともすっきりしない幕切れとなり、表彰台の欠席は、さまざまな憶測を呼んでいる。
可夢偉は、予選でも“災難”に遭っていた。最速タイムを記録したが、チームが記入した燃料のデータに記載ミスが発見され、記載と燃料が異なる、ということからタイムが抹消され、ピットスタートのペナルティを受けたのだ。
これがケチのつき始め。ピットスタートはフォーメーションラップに参加できず、結果として1周遅れでスタートすることになる。可夢偉はこのペナルティが、不当に大きかったとSNSでコメントしていたが、確かに大きすぎる罰則と言えた。もしかすると、主催者が、強すぎるトヨタに対してより厳しくなっていた?
それでも、スタートは大きなハンディを背負った可夢偉も、7 トヨタTS050 HYBRIDを駆る他の2人もそれに屈することなく、挽回目指してレースを闘い、ゴールまで10周を残す頃には、トップをいく僚友の8 トヨタTS050 HYBRIDに追いついた。最後のステアリングを握っていたマイク・コンウェイは、8 トヨタTS050 HYBRIDのアンカーを務めるフェルナンド・アロンソの背後にピッタリと着けるが、そこでペースを落として2位を護る走りに切り換えた。“速さ”を見せ、我慢したのだ、と言いたげに。少なくともそう見えた。
残り10周の間、周回遅れが挟まって1位と2位の差は開久場面もあったが、再びコンウェイが追いついて、またペースを落とすという繰り返しが何度かみられ、結局、コンウェイは、2位のままでゴールした。
こうした流れの中での表彰台だったので、チームから2位に対して行なわれた指示に反発した可夢偉が表彰台に参加しなかったのではないか、との憶測が広まったが、“エンジニアと打ち合わせをしていた”というチームの話ではそれはなかったことになる。だが、今回のWEC開幕戦は、次が総本山のルマン24時間であることを考えると、この件に限らず、なにやらきな臭いムードが漂っていた。
(2/2につづく)
[STINGER]山口正己
photo by GAZOO RACING