明るいニュースを日本に–佐藤琢磨会見全録その3
ここでも”一生懸命”の姿勢が現れるトークが参加した報道関係者を引き込んだ。
(その2『最後の5周』からつづく)
牛乳を呑んでから二週間、インディ500ウィナーは、全米の注目の中で、メディアツアーに引っ張り回され、さらにインディ500に続くシリーズ戦を3戦こなして凱旋帰国した。
おいしい牛乳を味わった”偉業”を広く伝えてほしいという琢磨が、最もこの勝利の喜びを伝えたいのは、復興地の子供たちだった。
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「牛乳飲んでからここまで、ちょっと時間が経ちましたけれど、その後デトロイトのレースがあり、テキサスのレースがあって、本日に至りましたが、本当に冒頭でも申し上げたように、感謝の気持ちが本当に大きいです」
「そしてこの喜びを、ほんとにたくさんの方に知っていただきたいです。ボク自身も本当に海外でスポーツをするというのは、正直言って人間ですから不安になることもありますし、モータースポーツは一部のドライバーを除いてほんとに厳しい戦いをしています。ボク自身も優勝を飾ることができましたが、8年間で2勝と言う非常に厳しい世界です。その厳しい中で何が奮い立たせるのかと言うと、モチベーションです」
「自分自身の目標もありますが、日本から海外に出て行ってトップに立ちたいと言うその気持ちが、ものすごく大きいですね。そうすると、イチロー選手にしてもそうですし、サッカー選手にしても、いろんな競技の選手、インターナショナルの世界で活躍するアスリートたちの活躍を見て、ボク自身も影響受けて自分自身を奮い立たせていましたが、皆さんと同じように、明るいニュースを日本に届けてくることができたと思います」
「このニュースをぜひ多く取り上げていただいて、インディ500の、そしてモータースポーツの魅力をたくさん伝えていただきたいと思います。でも1番届けたいのは、復興地だと思うんですね。震災が起きた2011年以来、特に復興地の子供たちを支援する『ウィズ・ジャパン』というプログラムをずっとやってきましたが、その子たちは、これからずっと一生かけても治りきらない、深い傷だったり悲しみだったり苦しみだったり、それを背負って、でも一生懸命生きていて、その子たちが希望を持っていろんなことに取り組んで欲しい」
「ボクのウィズ・ジャパンのプログラムの最終イベントは、1日のイベントですが、その中で、今まで1回もゴーカートに乗ったことがない小さな7歳位の女の子が、怖くて泣いてしまいました。駐車場で小さな電気カートで、まずは直線で動かして、それができたらパイロンで周回を作ってあげて、それが何かできるかなぁと言う感じになるんだけれど、その時はまだ、緊張感で怖がっていて、でもやろうとするんですね。その女の子はモータースポーツなんか知らないしサーキットにも行ったこともない。多分お母さんがファンだとと思うんですけど、お母さんに連れてこられて、何も分からずに来た。だけどその後、夕方に本物のカートコースを自分の力で1人で走ってグリーンフラックからチェッカードまで走りきって、タイムトライアルを完走しました。その最初に泣いた女の子は、ピットに入ってきてからバイザーの中は満面の笑みでした」
「だから、その子は、不可能だと一瞬思ったと思うんですが、やってみたら楽しかった。楽しいからもっとやりたい。周りにうまくできる人がいたらそれは悔しい。そして力を振り絞って走りきったんですね。できないと思った瞬間、誰かが背中を押してくれる力がなければ子供たちを動けない。そういう一連のプロセスを、ゴーカートを使ったウィズジャパンのプログラムを、非日常と指で見直し知らない世界を見せてあげる。それでやっと楽しい自分の目標達成した時は楽しい。この感動を忘れないでほしいですね」
「それが僕が一番伝えたいことなので、こういう形で夢を実現できたこと。信じ続ければ夢は叶うんだ、と言うことを、今年、自分自身も改めて挑戦することの大切さ、夢を持つことの楽しさを改めて経験することができたと思います」
「そのことを子供たちに伝えて、福祉につなげていきたい。この勝利を皆さんと分かち合って、そしてホンダの一員としてここまで来れたことを感謝とともに誇りに思います。まだまだ目標も夢もあるんですね。今度は、今シリーズポイントで3位につけています。先々日のテキサスのレースでシーズンが折り返しになりましたので、9月まで一生懸命走って、チームと共に、シリーズタイトルを大きな目標としてがんばっていきたいと思います。そして、次の機会に皆さんにお会いできるのは9月の日本グランプリの時だと思いますが、新たな優勝の報告ができればと思います」
(その4『質疑応答-1』につづく)
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