居眠りのおかげ!?–佐藤琢磨会見全録その4(質疑応答-1)
6月13日の東京青山の本田技研工業株式会社のウェルカムプラザ。ひとしきり報告と感謝のメッセージを届けた後、佐藤琢磨は、詰めかけた報道関係者からの質問に答えた。
例によって、懇切丁寧な受け答え。インディ500に優勝するためには、明晰な頭脳が要求されることを、改めて認識させる理路整然としたコメントに会場は聞き入った。
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—-序盤のディクション選手のクラッシュの後30分ほど、レースが中断したが、その間になにか勝機があったとお聞きましたが。
「もったいぶるようなことじゃないんですけど、単純に昼寝をしたと言うことです(笑)。医学的にも証明されているパワーナップと言う言葉がありますが、どうしても睡魔に襲われたときに、起きようとして頑張っていても全然眠気が取れない時があると思うんですが、その時にほんとに一瞬でも、1分、2分、長くても3分、30秒でもいんですけど一瞬眠ることによって脳がすごくすっきりとするんですね」
「実は寝ようと思って寝たわけではなくて、そこまでのレースでの緊張感すごいものがありましたから、レッドブラックになって車が止まった瞬間に、やっぱりちょっと落ち着く瞬間があります。そしてこの後およそ1時半間半から2時間すごい戦いをつづけなければならない、その戦いに備えると、体がほんとに、生きてる状態さえエネルギーを使いたくないと思う瞬間があるんですね。でふっと眠気が襲ってくる。しかも(背中の)後にはエンジンが暖かくなってホワットしていて(笑)、目の前からは送風機があって顔が冷たい、シートは、自分の体に合わせて整形されたスペシャルシートでして(笑)、ハンドルもペダルもあるところにすべて自然のようにある。最もカンファタブルなドライビングシートなんですね。で、ソファーにいるような気持ちで、眠りをしましたが、その時ちょっと夢を見まして、その夢が何だったのか覚えてないんですが、夢を見たのを覚えてまして、だけどそのうち夢から目覚めたときに見えたのが、何万人もいる1コーナーのスタンドとコクピットなんですね。で、インディ500なんだ、みたいな感じで、自分でびっくりしましたが(笑)、あの一瞬のパワーナップが、その後の異常に高い集中力を維持してくれたんじゃないかと思います」
「同じような経験を2002年の鈴鹿の予選の時でもしているんですが、アラン・マクニッシュが130Rで大きなクラッシュをして、ガードレールが破れ、その修復に多分1時間半近くかかったと思うんですが、クルマを降りて、あの時代は11周4セットのタイヤで自由に予選を行なえると言うことで、最後の一発にかけていたんですが、その寸前のアクシデントでした。で実際僕は、クルマを降りて一度ガレージに行ってデータを見ていたんです。チームメートと自分のこれまでの走りを照らし合わせて、あとほんとに100分の1秒でも速く走るにはどうしたらいいか、なかなか予選中にそんなことをすることは普通できないんですが、めったにないチャンスなので、このアドバンテージを得ようと思ったんですが、そこで眠くなってしまってあの時は寝てしまいました。でもそれが功を奏して、予選で自分の最高の走りができたと、あの時思いました。今回も同じような経験をできたと言うことで、レース前は昼寝に限るな、と思いました(笑)」
「誰に起こされるでもなく、自然に体が緊張してるので、おそらく眠って、いちど頭がすっとリセットされて、自分の体で起きることができたンだと思います。何10分も寝てしまうと、体がシャットダウンしてしまうので、そういうふうにならないような、ある程度の緊張感があったんだと思います」
(その5『質疑応答-2』につづく)
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