レッドブル・エアレース初の日本人ウィナー室屋義秀インタビュー4/4
6月5日に、幕張で行なわれたレッドブル・エアレース2016の2日後、日本人初のウィナーとなった室屋義秀に話を聞いた。初勝利の興奮を忘れないために。
(その3からつづく)
(その4)
◆次へのフライト
次の活動は、まずはチャンピオンを取ることにちがいない。しかし、室屋には別の”野望”といえる想いがある。スカイスポーツを日本に広めるためにやろうとしていることがあるのだ。
「レッドブル・エアレース・パイロットを目指しても、14席しかないので、14名しかなれない。14人全部が日本人になるとも思えないので(笑)、もっと裾野をガッと広げないと。しょせん付け焼き刃でパイロットを養成しても無理だ、ということで、福島県と共同の”子供プロジェクト”を展開しています。
パラグライダーを開発してそれを引っ張って飛んでもらう。体育館の中でも、2〜3人で引っ張ると簡単に浮くんです。それを使って、とりあえずフワリ体験というのを味わっていただいて、とにかく自力で飛んでもらおう、と。
そういったところでいくと、福島県内だけで小学生中学生が20万人いますから、その中から、1%でも0.1%でも興味を持った子たちが出てくれれば、と。パイロットにならなくても、整備士でも、いろんな道がありますから。そういう人たちが、10年くらいして社会人になると、いよいよ航空ということを知っている人たちが違う世代を創っていくと思いますんで、そういう息の長い活動を去年から始めていますので、続けていきたいと思っています。
室屋は、むしろ2日前に幕張で勝ったときよりも目を輝かせて早口でそれを伝えてくれた。熱意がいやでも伝わった。
—-子供たちはよろこんでいますか?
「いや、大人が(笑)。ボクかやっても凄く面白いですから。興奮しますよ」
—-飛行機の操縦は、難しいと思っているけれど、自動車より若干難しいだけだ、とおっしゃっています。空飛ぶのでムチャクチャ難しい気がするのですが。
「操縦自体は、三次元なのでクルマよりちょっと要素が多いですけれど、そんなに特殊な能力がなくても飛べます。機体の設計が本当にいいので、そうなっています。クルマより、事故率がずっと少ないですし、どっちかというと安全かな、と。でも、本当に突き詰めて飛ぼうと思うと、自然が相手ですし、止まれないし、というような厳しい面もありますけど、教官がいて制限値がある中でやるなら、安全なので、そう特殊なものではないと思います」
—-ご自身のことに話を戻します。今年目指すのは。
「総合で一番(チャンピオン)を、ということに変わりはないです。次の4戦目で折り返してそこでチャンピオンシップのリーダーが決まって前半が終わる。5戦、6戦くらいで表彰台くらいまでの確定期に入ってきますので、きちっとそこに入って。7戦になってしまうと追いつかなくなってきますので、そういう途中経過を観ながら、ポイントを取っていくと思います。優勝には拘りますが、2位になったからといっていちいち気にする必要はないかな、と。その考え方が、いい結果につながるかな、と」
—-勝った後と、前では、チャンピオンに向けての感触みたいなものは変わりましたか?
「変わらないですね」
—-それだけ自信があった。
「そうですね。勝ったからといって実力が上がったわけではないですから。トロフィーもらったからといって速くなるわけでもないので(笑)。ただ、勝つコツというのは凄く掴めたと思います。それは凄く大きいと思います。勝つ雰囲気といいますか」
—-他の選手は嫌がりますね(笑)。
「他には極めて大きなプレッシャーになると思います。そういうものを含めて自分が強くなったといえると思います」
—-いま勝っておかないと、というような焦りはないですか?
「我々は常に他より努力をしていますから、それをやっていれば必ず勝ち続けられると思っています。でも、他がそれ以上やってきたら、その時は彼らが前に出るので、息切れしないようにどこ待て走り続けられるか、という勝負だと思います」
間違いないのは、室屋義秀の、いや、日本人のスカイスポーツの第二章が始まった、ということだ。それを認識させてくれた張本人室屋義秀の次が”未来”が楽しみになった。
とりあえずの未来は、第4戦ブダペスト戦。歴史を刻んだ鎖橋を舞台に、7月16-17日に決戦が行なわれる。
photo by REDBULL / [STINGER]
※もっと室屋義秀を知る
http://www-new.redbullairrace.com/ja_INT/article/shi-wu-yi-xiu-meng-hada-kiku?preview-key=dfaf4d139424d125