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「常に滑っています」–佐藤琢磨会見全録その6(質疑応答-3)

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この瞬間から、超多忙が始まり、佐藤琢磨は、インディ500に勝つことの凄さをする。



(その5『下世話な話も面白い!!』からつづく)

インディ500の先輩である松田秀士さんに続いて、往年のレーサー津々見友彦さんからも興味深い質問がが出された。
 
ハイスピードオーバルである特殊なインディアナポリスの実際の走りやセッティングの考え方など、琢磨らしくていねいな受け答えでやりとりが続いた。


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—-Twitterでミルクを出された写真を拝見しました。インディ500に勝つとそんなに周りの環境が変わるのか、勝つことの大きさやエピソードをお聞かせください。

「改めて北米における認知度が凄いんだなと思いました。チェッカードフラッグを受けた瞬間から、僕自身の体は自分の体ではなくなっていました(笑)。もうほんとにメディアのための1つの道具として、あの日も記者会見が終わってから8時半まで、15分から20分くらいのライブインタビューがあって、濡れたウェットスーツのまま8時半までいたんですが、その後ずっと、月曜日もバンケットがあって写真撮影があって、真夜中にインディカーのプライベートジェットでニューヨークに行って、翌日は7時前にホテルを出発して11時間のメディアツアーをやって、その日の夜のパーティーに出てからまた真夜中の便でテキサスに行って、と言うスケジュールだったんですけど、ニューヨークにいてナスダックの市場の最初のベルを鳴らすと言うほんとに名誉なことやらせていただいたり、インタビューもあるんですけど、街行く人たちが知ってるんですね、インディ500があって勝ったのは日本人であると」

「名前を知らない人がたくさんいるんですけれども、みんな声をかけてくれるで、それがずっと続いていて、特にメディアツアーの最中は、わかりやすいですね、こういう格好(チームシャツ)をしているので、向こうから声をかけてくれるんです。それが数日経ってデトロイトレースに行く直前だったと思うんですけど、レストランで食事をしていたら、ほんとに結構暗いレストランなんですねだけど、通っていく人たちがコングラチュレーションと言っていく。(普通の格好をしていても)分かるというのは凄いんだなと」

「各新聞雑誌、雑誌はそんなでもないですが、新聞は一面で扱っていたし、レストランにも何も言ってなかったんですが、ミルクをだしてくれて。もうミルクはいいやって感じだったんですけど(笑)。そういう、なにか粋な計らいというか、スポーツにおける特に北米におけるインディ500の立ち位置というのは、非常に高いんだなということを改めて感じました」


—-おめでとうございます。津々見(友彦=1960年代終盤、アンドレッティのチームで修行を積んだ経験を持つ)と言います。今ここで気が付いたんですが、実は私50年前にアンドレッティの車で1周か数周、インディナナポリスのコースを走行したんですね。そのちょうど50年後に琢磨さんが優勝したと言うことは、何か素晴らしいなと思いました。ほんとにおめでとうございます。
 
スーパースピードの世界は、松田(秀士)さんから聞かせていただくくらいなのですがその辺の感覚について聞かせてください。
ストレートから1コーナーに入る時はブレーキングするんですか、それともスロットルオフで?

「アクセルを抜きます。全閉をしないですニュータイヤの時とか、向かい風の時は全開で行きます。ただ前に車がいるときは全閉あるいは半分スロットルを戻したりします」

—-その時の速度は?
 
「コーナーの進入速度は、370km/hから380km/h。スリップストリームに入ってると380km/hくらいで、コーナーのボトムスピードは340km/hくらいです」

—-安定して走っている時は良いのですが、攻めているとズリッとくるんですか?

「きます、常に滑っています。もちろんグリップ走行、ドリフト走行いろいろありますが、細かい話をすると、グリップ走行といってもタイヤには確実にスリップアングルと言う物ができていまして、いわゆる教習所で習う内輪差というのは、レーシングカーの場合50km/hで走っていてもありえないんです。フロントが通過してもリアは(両手を肩幅に広げて)このくらい離れています」

「インディ500をボクが初めて見たのは2009年の予選ですが、その時、武藤英紀選手が出ていて、とにかく恐ろしいから予選出たくないと。ボク英紀を応援して、どんな感じなのと聞いたら、いや琢磨さんやりたくないんですよ、と言うのでなんでそんなこと言うのかと思ったら、要するにハンドルを切ると言うのは抵抗になる。まっすぐきたものを曲げようとするので、フロントの車輪が傾くとそれは抵抗になる。本来安定させようとするとリアタイヤが例えば、数度スリップアングルが付いているとフロントの方が多ければ(ステアリングを)切るだけでいいので安定しますが、それが大きなると、スクラブと言う言い方をしますが、抵抗になってしまう。それを避けるためにハンドルを切らないクルマにする。それか行き過ぎてニュートラルになりすぎると、リアのスリップが大きくなって、これまた速度が落ちてしまう。そのバランスをある程度とらなければいけない」

「予選の4周と言うのは、タイヤの摩耗だったり劣化がありますから、風向きにもよりますが、すべてのコーナーが同じように見えて全然違うので、1周1周、アンチロールバーやウェイトジャックを使いながら、究極に抵抗を抑えて全開で回れるようにしていくんですが、その作業をするときは、(リヤが滑って)いつでも飛んでいくわからないので、ほんとに怖いものなんです」

「1コーナーの内側から見ていて、生で見るとよく分かるんですが、クルマは完全に横を向いているんです。それをドライバーが細かく修正しているのを見たときに、ほんとに鳥肌が立ちました
。正直F1の世界から来て、スピードに対するアレルギーなんて絶対にないと思っていたんですが、これはオレにもできないかもしれない、と一瞬思ったくいでした」

—-そのズルッと来たときに、1つはステアリングでコントロールをすると思うんですが。

「そうですね。予選の時はアクセルを戻したら絶対にタイムロスしてしまうので、基本的にはステアリングになりますが、先程言ったように、ステアリングを切るだけでは抵抗になってしまうので、アンチロールバーを使ってバランスを変えながら走らなければいけないですね。そして1番難しいのはトラフィックです。初出場したフェルナンド・アロンソ選手は、世界最高のドライバーですから、マシンコントロールにかけては誰も負けないというか、期待通りのスピードを見せてくれましたが、彼がレースをリードしていてほんとにこのまま勝っちゃうんじゃないかと思ったかもしれませんが、実際はそんなに甘くない。ボク自身も先頭に出て試したんですが、あれはトラフィックに入っている状態と自分で舵を切ってたときの差をみたかったですね。それ以外は先頭走ると風の抵抗が凄いので燃費がものすごく悪くなります。ですから本当は先頭走りたくない。4〜5番手にいてアクセルを戻しながら、燃費を稼いで、先程言ったように、ピットストップ6回も7回ありますから、1回のストップに対して1周ポケットに入れていくと、実施上の差のついてしまうのでそこでいかに有利に戦えるかと言うことをやらなければいけない。でもフェルナンドは、”ボクとそんなのトラフィックの中は怖いから、先頭を走る。燃費なんか知らない”と言って、本当にフェルナンドらしい走りをしていました。だけどそれは、観客を魅了する意味でも素晴らしいことだったと思います」

「彼がリタイヤする前にいたポジションは10番手前後だったと思いますが、あれだけレースをリードしても、残り30周になると10番手に入るのがいかに難しいかと言うのは、ボク自身も経験を積んでわかっていました。(フェルナンドと)メカニカルトラブルなしに一緒に戦えたら良かったと思いますが、それくらいトラフィックにあってときのコントロールはほんとに難しい。ボクも最後の5周でリードするまでは、全開では走りませんでした」

—-スリップストリームに入った時と言うのはどんな感じになるんですか?
 
「クルマが振られてれます。高速道路でトラックを追い抜く時あるいは追いかけられた時に、クルマが吸い寄せられてることがあります。あの感覚です」

—-ちょっとを泳ぐ感じですね。
 
「そうですね。まぁ基本的にはダンフォースがあるけれど、クルマが滑ってしまう。それがフロントだけじゃなくてリヤも滑ってしまうたりするので、それが怖いんですが、常に(他車との)距離と左右のポジションを、ほんとに数センチ単位のことですが、それを感じながら走っています」

—-1コーナーの横Gはどのくらい出ているのですか?
 
「インディナアポリスはそんなに高くないですね。大体4Gくらい、3.7〜4Gくらいです。縦Gも入ります。データを見てないですが、それでも1.5とかそれくらいですね。テキストやアイオワは凄いです。6Gくらいですごいね。ほんとにびっくりなんで、スチールのサスペンションがもつのかなと思うくらいで心配になるんですが、その場合はバンク角は20度もあるので、下方向に3G、横方向に6Gですね」
(その7『チャンピオンの可能性』につづく)

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