F1を目指す若手と一問一答–松下信治 (GP2)
2017年シーズンにホンダが期待をかける2 輪4輪の若手。中央に松下信治が立った。
2月13日にホンダは、2017モータースポーツ計画を発表した。
発表会見の後、[STINGER]に用意された東京青山の東京本社、ウェルカムプラザ2階の特別室のドアを二番目にノックしたのは、ヨーロッパのGP2で3年目を迎える松下信治。今年も、ARTグランプリからパリを拠点にGP2シリーズに参戦する。
2015年のGP2デビューイヤーは、英語力もままならず、パリでの独り暮らしにも不安があったが、その表情が証明するように、貫祿ともいえる風格が備わった受け答えで、3年目への想いのたけを語った。
まずはF1に乗るためのスーパーライセンスを取ること。明確な目標の中で、心地よいプレッシャーを感じながら語る一言一言からヤレる感触が伝わり、開幕が待ち遠しくなった。
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—-早くも3年目になりますね。
松下:早いですねぇ。
—-だんだん大人っぽく、というか貫祿が着いてきました(笑)。
松下:いえいえ、結果で貫祿ださないと(笑)。
—-(笑)、たしかに。去年はどんな1年でしたか。
松下:結果が示す通りで、特に中盤戦に浮き沈みもあったし。それはチームのミスもあるしボクのミスもあるし、両方ありますけど、そこら学んだものが多いので。
—-最終戦のアブダビで、素晴しいレースを見せられたと思いますが、そこまで、うまく行かなかった理由というのは?
松下:フリー走行と予選が大切なんですけど、イタリアとかスパもそうですけど、予選でミスしてして中団に沈んで。そこからポジションを挙げるのは難しいので、そこですね。
—-ミスの原因は?
松下:攻めすぎたりとか、いろいろありますけど。
—-一昨年、GP2デビューの年が終わった時に、GP2の特殊性というか、日本のレースとの違いを教えてくれました。フリー走行が短くて、予選でニュータイヤを履いていきなり2秒上げなければならなくて、ブレーキングでギリギリを攻めるのが簡単ではない、と言っていましたが。
松下:1年目は、行ききれなかった感じですけど、2年目の去年は、クルマに対する余裕ができてきて、欲張りすぎて行き過ぎたとか、そのパターンが多かったですね。スパとかもよかったんですけど、予選で失敗しちゃって。セクター1で全体ベストだったのに。レースペースに関しては、チームとのセットアップが失敗したりして落ちてしまったレースもあったし。そういうかみ合わない状況がありました。レースは、かみ合わなければ負けるんで。
—-6月の第3大会のアゼルバイジャンは、期待しましたね。誰も走ったことがないコースで、それもすさまじく高速コースで速かった。
松下:そうですね。自分でも驚いたというか、うまくできたのが嬉しかったですけど。予選でトップ2にいることができて、レースをリードして、完全に勝てるレースでしたけど。そういうレースができるポテンシャルがあるんで。でも、ペナルティで次のレースに出られなかったですけど。
—-再スタートでセフティカーの追い越しのタイミングが早すぎた。
松下:勝てると思ってちょっと焦ったんだと思います。冷静だったらやらないようなミスですね。
—-もったいなかった。出場停止は痛かったですね。
松下:ペナルティは取られると思っていましたが、まさか、次の●に出れないと思っていなかったので。
昨年、すでに場に溶け込んでいた。今年は力をする年だ。
—-モナコで、2レース目とはいえ、勝ちました。
松下:モナコは、フリー走行で事故っちゃって、2〜3周しか走れなくて。モナコは走らないとだめなんで、そこがまず失敗で、レース1でなんとか追いかけて8位でゴールして。
—-リバースグリッドでポールポジションからスタートできた。
松下:ですね。レース1でファステストラップも取れていたし、あとは、レース2がスタートを決めれば抜かれないことが分かっていたので、スタートさえ、という感じで、雰囲気はよかったんですね。それを決めて、一人で、前に誰もいないんで。そういうレースができました。
—-2位以下を突き放して独走でした。観ていても気持ちがいいレースでした。1年目は、モナコが初めてのコースなので厳しいと言っていましたが、去年は初めてのコースがなくなる、と言っていました。
松下:そうですね。でも、モナコもそうですけど、他のサーキットでも、初めてじゃなくても、クルマと自分がいいセッ
トで走らないとトップの方には行けない。そういう部分で学んだシーズンでした。
トで走らないとトップの方には行けない。そういう部分で学んだシーズンでした。
—そうすると、3年目の今年をどうとらえていますか?
松下:メンタル的なというか、準備も含めて、”こうしよう”というアイデアもあるし、思い詰めずにやってもできるので、クルマも速いですし、ドライバーもそれなりにレベルも挙がってきているので、うまくすれば勝てると思っているので、楽しくやりたいです。毎戦拾っていく、勝つとこは勝つ、と。ちょっと苦しいところは、それでももぎ取ってくるような、力強いレースをできる人がチャンピオンになれると思います。
—-今年は、ライバルとしては?
松下:いや、全然、誰が出るかまだ知らないですけど、チームでいうとプレマが速いんじゃないですかね。あとはダムスとか。
—-今年の体制では?
松下:まだ走っていないです。3月12日のバルセロナが初テストです。12月のアブダビのテストから約3カ月、乗ってないんで、早く乗りたいですね。
—-拠点は今年も?
松下:はいパリです。気に入ってます。いい街ですね。住んでる15区も、ベッドタウンみたいな感じで便利で住みやすいし、フランス語は喋れないですけど、友達も何人かできたし。集中するという意味で、今年も場所を変えずに、同じ環境でやっていこうと思います。
—-地下鉄も便利だし。
松下:地下鉄はあまり乗らないですね。パリ市内はウーバー、チームに行くときはクルマで、という感じです。
—-ウーバー(スマホで呼べるいわば公式白タク)はもう慣れた?
松下:ウーバーはいいですよ。
—-メンタル的にも環境的にも。
松下:それに慣れたという安心感はあります。やっぱりあとは、ここまできて、3年目で経験もあるし、できるだろう、と思えるパッケージなので、それをやるだけ、と思っています。
—-住んでいるところも、サーキットも、チームも、慣れが必要、ということですね。
松下:住んでいるところは知らないですけど、サーキットはそうじゃないですか。
—-今の気分としては、とにかく早く乗りたい、と。
松下:そうですね。待ち遠しいです。
◆3度目の正直の年
—-3年目、三度目の正直、と。
松下:うん、そのつもりです。
—-今年、なんとかしなくちゃ、という焦りは?
松下:それはゼロじゃないです。本当に、行けるか行けないかというところに来ているんで。でも、タラレバですけど、仮に去年いい成績を残せたとしても、今年はF1には乗れなかったし、と考えると、タイミングというか、ドンピシャだと思うんで。
—-来年、ホンダがサテライトチームにエンジンを出す可能性はかなり高い。
松下:どうなるかわかりませんけど、そう望んで、今年与えられたチャンスを活かせば乗れるわけなので、手遅れではないですし。
—-楽しんで、そこに備えてスーパーライセンスを取っておく、と。
松下:その最低条件というのが与えられているので、それをクリアーするかしないか、ということだと思います。
—-ガスリーのクルマがマットカラーだったでしょ、なので、それは、トロロッソじゃないかと(笑)。
松下:ガスリーは、レッドブルの育成なので、レッドブルに行くかもしれないし、トロロッソに行くかもしれないし。
—-そうではなくて、ホンダのサテライトチームが、トロロッソになるという暗示じゃないかと(笑)。
松下:あ、そういうことですか。わかりませんけど(笑)。
—-まぁ、勝手な妄想ですけど(笑)。ともあれ、5月の段階で、パワーユニットが決定していないチームに、ホンダは供給の義務がある規則なので。
松下:それでチャンスはあるので、それをつかむかつかまないかはボク次第なので。そのために今までやってきたし、絶対にやりますよ。
—-いい気持ちのプレッシャーを受けている感じ?
松下:うん、そうですね。いろんなプレッシャーはあまりすけど、自分の中でいいプレッシャーに変えて、それは大事だと去年学んだことなので、一皮むけたレースもできると思うし。
—-楽しみにしています。
松下:よろしくお願いします!! ありがとうございました。
MY’S 山口正己
photo by [STINGER]