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初めてのFIA-F4–4/4:全員の自戒の念

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FIA-F4は始まったばかり。全員の力で素晴らしいカテゴリーになる可能性満載だ。

その3/4からつづく)

◆FIA-F4の今後の課題
これまで、期待されながら消滅や下降線を辿った入門カテゴリーはいくつもあった。衰退の理由はいろいろ考えられるだろうが、常について回るのは、そこに関係する人々の”場”に対する認識不足だったと思える。

FJ1600が好例かもしれない。底辺育成のために発足したカテゴリーだったはずが、いつのまにかコンストラクターの競争の場になり、タイヤ戦争が勃発した。シャシーが進化して速いタイヤが要求されれば、マシンは滑らなくなって、FJ1600は当初の構想と違うものになった。

タイヤに限って言えば、過当競争を防ぐために、ブリヂストン、ダンロップ、ヨコハマがそれぞれ持ち回りの1年交代でコントロールタイヤを受け持つようになった。

一見、整合性が着いたように見えたが、前年のコントロールタイヤよりタイムが遅いのでは格好がつかない、という状況が当然のように出現し、タイムはじわじわと速くなった。

事実関係に認識不足があるかもしれないが、大方は、そんなイメージだった。要するに、”育成”とは名ばかりで、大人たちの”都合”で基本形態が変化してしまったのだ。

ザウルスという素晴らしいワンメイクカテゴリーに、発展型のニューマシンが出たと知ったときには愕然とした。マッチ(近藤真彦)も参戦して話題になり、その後、東京バーチャルサーキットのシミュレーターインストラクターとして活躍する砂子塾長もこのクラスの経験者だった。

しかし、新しくて速いマシンが出れば、そのマシンでなければ勝負にならない。全員が新車を買えればいいけれどそうはいかない。新車を買わせるなら、それは上級クラスにステップアップさせることを考えるべきだった。

当然、古いマシンの所有者は成績が振るわず、結果としてモチベーションを保てずに、もちろん他にも理由はあったと想像できるがが、ザウルス・カップは消える運命を辿った。

◆参加者の責任
一方で、たとえば、ナンバー付きのVitzレースは、レース入門の門戸を広げる意味で大いに注目されたが、2年目に、ワークスのような存在が出現して、レース

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を牛耳るようになり、せっかく開いた門戸を狭めてしまった。ワークス活動は、上のクラスでやるべきで、ナンバー付きのVitzレースには似合わない。

これは、エントラント側の責任だ。”場”の空気を読み取って自分の置かれたポジションを弁え、自分たちが参加している”場”を思いやることが必要なのだ。

FIA-F4はまさに、そこでできることと、上級クラスでやるべきことを混同しないような心がけが必要だ。日本人の多くが、この”場”を考えることがあまり上手ではない気がする。これは、F1GPを含めて300戦以上の海外のモーターレーシングを見物した経験から、欧米との違いを強く感じるところだ。

たとえば、ルマン24時間レースでもF1でも、日本のメーカーは、都合がいいときに出てきて、状況が悪くなると引っ込んでしまう。これは、”場”を考える前に、自分のことを考えてしまうからだ。

昨年からルマンに戻ったポルシェだって、という声も聞こえるが、それは認識不足だ。ポルシェは、911シリーズという”素材”を長きに渡って提供し続けて、ルマンを支えてきた。支えて、育て、そうして築き上げた”場”で勝って優秀性を証明する、という順番が正しい。都合がいいときに出たり入ったりするかの国の自動車メーカーは、国際舞台ではそれが恥じるべきことだと知ってほしい。

◆全員の自覚
同じことがFIA-F4にも言えると思う。関係している全員が、FIA-F4という”場”を支えているという自覚を持って、育てる覚悟で臨んでほしい。

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モーターレーシングは、”自戒の念”の上で成立する。コンストラクターは安全を考慮してマシンを作って提供し、メカニックは、タイヤが外れたりしないように正確にパーツを組み上げ、ドライバーはコースからはみ出さないように先を急ぐ。サーキットは万一コースオフしても、余計なリスクがないコース設定を考え、緊急の場合は、ヘリコプターを含む搬送のシステムを構築する。

どこかが破綻したとしても、その”場”にいる者が責任を取るのがモーターレーシングの掟だ。『危ない』ではいけないが、『危なっかしくない』完璧な安全を求めたら、ハナからモーターレーシングは成立しない。だからこそ関係する全員がそれぞれの”責任”を自覚し、そこで初めて成立するのがモーターレーシングなのである。

若干大げさな話になるが、FIA-F4は、日本の民度を証明する縮図として、国際的な比較の中でスタートしたと思うのである。FIA-F4の全関係者は、そのことを年頭に、FIA-F4を育てていく覚悟をすべきだ。もちろん、我々報道関係者も、”国際的な視点”でこのシリーズを捉えて情報を伝えなければならない。

FIA-F4が、ドライバーだけを育てるのではなく、シリーズが全体を育成する、もっと大きく言ってしまうと、日本人を育てる、という意味で、メーカーの育成システムとは一味違う存在であることも認識しておきたい。

10年経ったときに、FIA-F4が、”いいカテゴリーになったね”と言われるために、関係者全員が自戒の念をもって取り組んでほしいと心から思う。

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なんとも楽しそう!! FIA-F4、期待のカテゴリーだ。
[STINGER]山口正己

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