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気になるトヨタのトラブル原因の発表

◆gazoo-2016 (4).jpg
トヨタは、先週のルマン24時間で、ゴールを目前にして5トヨタTS050 HYBRIDがストップした原因について発表した。

しかし、エモーショナルなドラマとして長く記憶されることになった第84回ルマン24時間の報告となるには少しばかり見劣りする内容だった。

◆曖昧な原因報告

トラブルは、「ターボチャージャーとインタークーラーを繋ぐ吸気ダクト回りの不具合によるもので、これにより、ターボチャージャーの制御が失われた」、と報告された。

しかし、”不具合”とはなにか、そして”制御が失われた”とはどういうことかについては明確ではなく、いささか曖昧な発表となった。

さらに、「不具合発生時、原因が特定されていない段階で、低下したエンジン出力を回復させるべく制御系の設定変更が試みられた」とある。回復させようとするのは、レースを闘っているなら当たり前のことで、とりたてて断る必要はないことなのに、あえてそう書いている。

「トラブルの真因については、現在ドイツ・ケルンのトヨタ・モータースポーツ有限会社(TMG)にて詳細を調査中」としているが、その後のひと言がさらに気になるものだった。

「なお、今回の原因が、第2戦スパ6時間レースでのエンジントラブルとは無関係であることは明らかとなっている」。この言い回しも、なにか奇妙なものを感じる。

「今回の原因が、第2戦スパ6時間レースでのエンジントラブルとは無関係である」で充分なのに、その後に、”ことはあきらかである”と追加したのは、何を意味しているのだろうか。同じ過ちは繰り返しません、ということをあえて言いたいのだろうか。とすると、誰に向かって?

◆トヨタF1のリリース

トヨタがF1に参戦していた頃、リリースにとある”事情”を感じていた。本来、リリースは、報道陣に向けて、つまりはその向こうにいる読者や視聴者に対して情報提供されるものだ。しかし、トヨタのリリースには、そうではないことが時折感じられることがあった。

最たる例が2003年イモラのサンマリノGPだ。当時は、予選の燃料搭載量が自由で、トヨタに乗るオリビエ・パニスは軽い燃料で予選を走って10番になった。だが予選後は、レースがスタートするまで燃料補給ができないので、早めにピットインしなければならない。

スタートでパニスは数台をパスした。軽さを利してダッシュが効くからさして驚くことではなかったが、リリースには、こう書かれていた。

「パニスは、スタートでダッシュよく順位を上げ、10周目に他に先駆けていち早くピットインした」と。

呆れてものが言えなかった。ダッシュがよかったのは燃料が軽いからだった。”いち早く”というのは、なにかが優れている時の表現だ。パニスは燃料がなくなったからピットインしたのだ。

そこで判明したのは、リリースは、報道陣向けではなく、日本の本社向けだったということだ。どうやら、進化したトヨタの中で、この部分だけは、いまでも旧態依然としたトヨタ流を貫いているのようだ。

今回、トヨタTS050 HYBRIDの基本設計を、ルマン・バージョンにブレなくもっていった設計思想やレース戦略など、研究所や戦いの表舞台は、確実にルマンをリードできるポジションになり、実際にポルシェを諦めさせるスピードをみせた。その部分だけみればいつ勝ってもおかしくないところに来た。しかし、だからこそ、そうなったときに、ソフトの分野が恥ずかしくないグローバルレベルになっていることを祈らずにいられない。

[STINGER]山口正己
photo by GAZOO RACING
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