可夢偉、WEC富士レース後会見全録
初代プリウスの開発責任者の内山田会長を挟んで、優勝トリオ。
10月16日の劇的なエンディングを飾った富士スピードウェイのWEC第7戦。#6のトヨタTS050 HYBRIDのアンカーを努め、激しい追い上げを敢行したロイック・デュバルの#8のアウディR18 e-toron quattroを振り切って、念願のトップチェッカーを受けた小林可夢偉が、カコミ会見で想いのたけを語った。例によって、鋭い反応をみせながら、淡々と冷静に、感動の主役可夢偉がレースを振り返る。
スタートでやや出遅れたが、その後挽回し。中盤の足踏みを最後に取り戻した。
◆「トラフィックだけはやめてくれ」
—-最後はダブルスティント(2つのスティントを一人のドライバーが連続で走ること)でしたが。
可夢偉:(ダブルスティントで)行けと言われたのではなくて、「勝つために行けと言われれば行くので言って」、と伝えたら、”タイヤ変えたらダメ”と言われたけど、じゃ、行くと。ダブルスティントのことは頭に入れていました。(#8のアウディとの差から)それしかないだろうな、と。
—-タイヤのケアはしながら?
可夢偉:それがそんなにケアできなかった。#1のポルシェが途中で来たことがあってケアできないままでタイヤがタレてしまって、堪えるしかないかな、と。
ダブルスティントを走ってタレたタイヤで思ったように周回遅れを処理できないジレンマ。
—-終盤、デュバルがグッと詰まってきましたが、一番苦しかったのは?
可夢偉:トラフィックですね。タイヤがダメなので、ブレーキを奥まで突っ込めないとか、タイヤを壊しかねないので、周回遅れとか、遅いクルマを抜くのにすごく苦労する。いつもの感覚で抜けないので、そこでロスするのは分かっていたけれど、とりあえず6秒台(1分26秒台)をコンシスタントにいけるようにベストを尽くした。でも、何回か7秒台に入ってしまった。リスクは取れないので難しい状況でしたが、とりあえず自分なりにベストをやれて守れたのでよかったと思います。
—-優勝は2009年以来、7年ぶりです。
可夢偉:何のレースです?
—-GP2アジアです。
可夢偉:ヨーロッパでも勝ってますよ。
—-いずれにしてもF1に行く前でしたが。
可夢偉:う〜ん、もう不感症状態になってる感じですね(笑)。
—-世界選手権初優勝ですが。
可夢偉:まぁ、そうですねぇ。世界選手権を勝てることはありまないでしょう? F1と、WRCとそれからWTCC、なかなか難しい(笑)。
—-で、感想は?
可夢偉:だから不感症になっている(笑)。思ったよりも・・・・って感じなんですけど、とりあえず、勝ててよかったし、レースが辛かったこともあって、チームが本当に頑張ってくれて、”ここは勝つぞ”って気持ちがあったからこそ、勝ちにつながったのかな、と。
◆「ギリギリ」
—-最後にダブルスティントで引き継ぐまでの状況は?
可夢偉:ちょっと辛いな、と思っていました。レースがスタートして(ペースが)よかったので、”さらによくなるかな”と思ったら一向によくならなくて、逆に辛くなっていったので、ちょっと予想外でした。
—-最後に、5秒ほどの感覚がクッションになった状態でしたが。
可夢偉:もう、トラフィックだけはやめてくれ、と思いながら走っていました。
—最後に乗るときに”逆転できる”と思っていましたか?
可夢偉:逆転しに行きました。心の中では、しに行くしかないな、と。
—-リスクは大きかった?
可夢偉:ダブルスティントだったので、それで(ベストを尽くして)アカンかったらしょうがないな、と。
—-思い通りの結果になった?
可夢偉:ま、ギリギリ。その分辛かったというのはありましたが。
—-昨日の段階では、コメントにかなり自信を感じました。
可夢偉:ボクももうちょっといけると思ってました。でも、全然行けなかったので。レースはそんなに甘くないな、と。
—-終盤、デュバルとのギャップを無線で伝えられていたと思いますが、デュバルのペースは。
可夢偉:ぜんぜん速かったですね。正直、ボクらより。普通にやったら手に負えないことが分かったので、一発は限界があるので、トラフィックでいかにロスすることなく行くかに集中して、タイヤ変えずにノンストップで行ってそこにかけるしかないな、という気持ちで行きました。
—-周回遅れを抜くときにタイヤカスは拾いませんでしたか?
< div>可夢偉:もちろん拾いますよ、でも、そんなことも言ってられない。とりあえず行くしかない(笑)。
◆「いいレースだったのは確か」
—-チェッカードフラッグを受けた瞬間の気持ちは?
可夢偉:ボクだけじゃなくて、みんなが勝ちたいレースだったと思うので、そこに貢献できてよかったな、と思うし、ここで勝たなかったらどこで勝てるのか、というのか今シーズンだったので、ここで勝ててよかったし、勝負は来年だと思っているので、その来年に向けていい気持ちで挑めるかな、と思います。
—-これまでいろいろなレースを戦ってきましたが、ベストワンといえるレースだったでしょうか。
可夢偉:全体的に今週、ボクはミスなくて調子よかったので、仕事の部分ではいいレースができたかな、と思いますが、何がベストレースかを言うのは言い切りにくいですけど、いいレースだったのは確かですし、もっとこういうレースを増やしていきたいと思います。
—-スタートのスティントで、ポルシェとアウディを抜きましたが、あの辺りのクルマの調子はよかったということでしょうか。
可夢偉:そうですね。”イケるのかな”、と。アウディが速いのはちょっとありましたが、なんとか、落ちてくるのを願いながら、というのはありましたが、全然落ちなかったので。
—-終盤気温が下がると、ペースが落ちるのではないかと思いましたが。
可夢偉:全然落ちなかったですね。なんだったんだろう。
—-ウィニングランのときに”グッときちゃった”ようなことは?
可夢偉:逆に、どうしたらいいんだろうな、と。このクルマでチェッカーうけてゆっくり走るのは初めてだったから。このクルマ、ゆっくり走るのが大変なんです。だからどうやって走るんやろ、という心配で頭一杯でした(笑)。
—-ゴールしてチームメンバーを見たときは?
可夢偉:普通に”よかった”と。とりあえず、ホームレースで勝てるということで仕事ができたということと、最後に、任されて期待されて出でて行ったので、ちゃんと仕事ができてよかったな、という感じですね。
◆「まさかの逆転?!」
—-レースは楽しかった?
可夢偉:楽しかったですよ!! ギャップが開かないし、縮まりもしないし、ちょっとでも失敗したら広がるし、ずっとそういう戦いだったので、そういう意味でここで結果を残せたのはよかったです。誰もミスなくできたのでこの結果が出たと思います。
—-ランキングは2位になりました。
可夢偉:なりました?!
—-23点差です。
可夢偉:お〜っ、一回(相手が)止まって勝ったら逆転、まさかの?! 凄いね。
—-残り2戦のクルマの相性はどうですか?
可夢偉:正直、ここほどはよくないかな、と。
—-でも、前の3戦ほど悪くない?
可夢偉:と思います。もうちょっといいと思います。
—-ポルシェの2号車が毎回トラブっています。
可夢偉:どこかで一回止まってほしいな(笑)。まぁ、それでもアウディの8号車も速いから。勝ちに行くつもりでやるしかないですね。
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