【コロナと闘う】F1は、整理整頓世界選手権その2
(その1からつづく)
◆走らないための工夫
日本人的には、一生懸命さを現す汗びっしょりは、F1GPの会場では、後れを取り戻すための動きにしか見えない、ということになる。
マールボロ時代にマクラーレン・チームに参加した知り合いは、ロン・デニスから、マールボロのウェアを着たら絶対に走るな、と言われた。マールボロのウエアで走っていると、大切なスポンサーであるマールボロが慌てふためいて見え、周到な準備ができないない存在と思われるからだ。
走らないためにどうするかといえば、事前に準備を整えておくことに尽きる。
◆1足29000円のスニーカー
具体的な例として、マクラーレンに、パートナーとしてシューズを供給していたアシックスが、GP毎に1足をスタッフ全員に届けていたというの逸話がある。
スニーカーは、年間数足あれば事足りるはずだが、例えば土曜日の予選の日に雨が降ったとき、汚れたスニーカーを日曜日の決勝レースで履くことがないようにするために、GP全戦はもちろん、テストやイベントでも、必ず新品を履けるように、1年間に1200足が用意された。これも、事前に万全の準備をしておくためだった。
ちなみに、靴べらなしでソックスのように履ける新機能のそのスニーカーは、特別な素材を使っていたこともあり、1足29,000円という高級品だったが、これもすべて、整理整頓世界選手権を闘うための準備の一環だったのだ。
そのスニーカーは、いまでも神戸のアシックス本社の“アーカイブ”に、他のシューズとともに保管展示されている。
[STINGER]山口正己
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