【山口正己の提言】コロナ騒動とマスコミ その5

特に新しいコースでは、メディアセンターに顔を出し、ジャーナリストやライターに、不具合がないかを訊ねている。
(その4からつづく)
F1GPを支えたエクレストンの「中立」思想
バーニー・エクレストンは、金の亡者と誰かが言った。名付け親は、社会構造を理解していない僻みの思考回路を持つ者だと思える。なぜなら、エクレストは、自分も儲けるが、例えば、端的な例として、彼がF1GPにてこ入れして以来、メカニックたちはそれまでの木賃宿から、高級ホテルに泊まれるようになった。自分だけ儲けるようなことはしない。F1GPというファミリー全体への分配を考えている。
F1GPを自分のコントロール下に置いてからと言うもの、エクレストンは莫大なテレビ放映権を手にするようになったが、チームに対して分配金として還元するようにもなった。富の再分配を誰からの文句も出ないようにし、F1ファミリー全員にメリットがあることを考えたのだ。
エクレストンの心意気は、チームに関係した者全員が理解して、それまでのイメージが誤解であることを認識するという。ホンダの第三期に関わり、エクレストンと交渉したホンダ・マンは、子細に渡るエクレストの気遣いに触れて、それまで抱いていたイメージが、勝手な想像だったと恥じたという。
彼はエクレストと打ち合わせをするために、ロンドンのテームズ川沿いのマンションのオフィスを訊ねるた時、エクレスト帰りに駐車場までついてきて、駐車料金を払ってくれたと回想した。また、第3期が始まった週末に、エクレストにメディアセンターに連れて行かれ、リリースの棚のどこがいいかを真剣に考えてくれたことに感激したという。仲間としてのホンダを、公平に扱うための心遣いだ。
もちろん、ビジネス的にもスキがない。2007年、鈴鹿サーキットから富士スピードウェイスピードウェイに日本GPが移った年、木曜日に富士スピードウェイを視察したエクレストンは、最終区間のワインディングコーナーを望む観客席を取り壊させている。その席のチケットが売れていないことを知り、空のスタンドがテレビに映ることを避けるためだった。
当然といえば当然。F1GPは、エイレストンにとって重要な『商材』であり、その商品価値を下げる映像を撤去したのだ。
重要なのはここだ。F1GPを自分の『商材』として大切に扱う。この思考回路に支えられたF1GPは、だからあらゆる意味で安売りしない、まさにF1 Qualityなブランドとしてのポテンシャルを持ち続けているということだ。
(その6につづく)
【STINGER】
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