イルカのように跳ね回るマシンたち–“ポーポシング”とは?
プレシーズン・テストで話題沸騰!?のポーポシングだが、情報の中には、誤解して伝わっていることも散見される。
3日間のプレシーズン・テストを終えたドライバーたちは、口々にポーポシングの酷さを口にした。
「跳ねまくるマシンはカンファタブルではない」(ボッタス)
「動きがトリッキーで、たとえば鈴鹿の130Rなと、非常にリスキーになると思う」(アルボン)
新しい車両規定で始まったテストで、各チームを惑わせているのが、“ポーポシング”といわれる現象だ。
ポーポシングとは、直訳すると『イルカのような動き』。水面を跳ねて独特の泳ぎ方をするイルカ。彼らは、それが正しい動きだが、路面の上を走るクルマにそれが起きると、極めて不安定な状況になる。特に、高速で走ることで微妙な空力的影響を受けるフォーミュラカー、中でもF1マシンがピョコピョコしていては話にならない。
2022マシンが例外なくフロントウィングが高いところに着いているのは、積極的に空気をボディ下面に流したい現れと思われるが、ボディ下面をベンチュリー形状にしたことで、新たなテーマが全チームに難題として与えられた。
ポーポシングという言葉を一般的にしたのは、1988年のロータス88だった。まず、“ベンチュリーカー”のロータス78が先鞭をつけ、ボディ下面の空気の流れが注目された。ロータス78は、マリオ・アンドレッティを1978年(1977年を修正)のワールドチャンピオンに押し上げた。
そして、その進化型として登場したのが、ロータス88(下の写真)。
ツインシャシーという、ベンチュリーシステムをベースにデザインされたマシンは、1981年のロングビーチGPに登場したが、空気の流れをコントロールできず、ストレートでピョコピョコと、まるでイルカのようにノーズダイブ(フロントの浮き上がり)とテールスコォート(リヤの沈み込み)を繰り返し、結局本番に参戦することなく姿を消した。これがポーポシングのいわば“発祥”だったのだが、2022年に、何故ボディ下面をベンチュリー形状にすることが必要だったのか。確かに、チームに、取り組むべき大きなテーマにはなったが、それ以上に、デザイナーたちに大きな問題を突きつけてしまった。
当面の話題は、ポーポシングをどう解決するか。デザイナーの視点から、ポーポシングを復習しておくことで、2022年がさらに楽しみになってくる。
[STINGER]山口正己
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