ウィングからベンチュリーカーへ–空力のおさらい
◆空気抵抗が、水滴型にすることで大きく減らすことができることは、前回お伝えしたが、これを頭に入れて、ヨットが進む原理を考えてみる。
普通の感覚では、風が吹くと押し流されて風下に流されるはずだが、ヨットは、帆のおかげで、風上方向に進んでいく。帆が、翼の形になるように、マストが中心からズレていることで、帆の外側と内側に気圧の差が生じて、気合が低い方に引っ張られるためだ。
鳥の羽が、軸がセンターではなくオフセットして付いているのも浮力を得られるメカニズムだが、ヨットも同じ。
これを基盤として飛行機の翼が設計されている。翼の上側の弧が下側より長いぶんだけ空気の流れが速くなって気圧が下がり、翼の下側を押す気圧で持ちあげられるという理屈だ。
レーシングカーのウィングは上下がこの逆。ウィングは、下側が上側より長いので、結果として上面を大気圧が押すことになってダウンフォースが発生する。
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究極のベンチュリーカー、ロータス88。1981年ロングビーチGP。
さらに、ウィングより効率よくダウンフォースを得る方法として、ロータスが1978年に、“グラウンドエフェクト”を発見/採用した。
グラウンドエフェクトとは、地面とボディ下側にできる中細りのベンチュリー形状が気圧を下げ、地面に吸いつく原理。通常のウィングで、数百kgレベルだったダウンフォースが、一気に2トンに跳ね上がり、ロータスは圧倒的なスピードを見せて1978年に、マリオ・アンドレッティとロニー・ピーターソンが1-2フィニッシュを連発した。
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黄色い部分が、空気の通り道。路面とボディ下面でできる中間が狭くなった“ベンチュリー形状”で地面に吸いつき、強烈なダウンフォースを発生した。
しかし、サイドの空気の流れを遮断するスライドスカートが破損すると一気にダウンフォースが抜け、死亡事故が起きたことで、「ボディ下面は平らでなければならない」、というフラットボトム規定ができて現在にいたっている。
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