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可夢偉が表彰台に乗らなかった理由・2/2

敵は身内にあり?

1/2からつづく)

◆天王山はルマン!!

7 トヨタTS050 HYBRIDは、5月第一週の週末に行なわれたWEC開幕戦のスパ-フランコルシャン6時間でツキに見放されていた。最初が、可夢偉が記録した予選タイムが抹消されたことだった。ミスはミスだが、単なる書類の記入ミスに1周遅れのピットスタートというペナルティは“厳しすぎる”、という意見もあった。もしかするとなにかの力が作用したのか、との邪推もできた。

今年のWECは、ポルシェが撤退し、トヨタTS050 HYBRIDのひとり相撲の様相を呈していた。これに対してWEC主催者は、ハイブリッドに規制をかけ、ノンハイブリッドが同等に戦えるような“配慮”を行なった。

この配慮は、均衡を保ってシリーズを盛り上げようとすれば、ある意味当然とも言えたが、一方で、極東の島国である日本のトヨタを勝たせたくないのではないかという意見もあった。どちらであったかは別にしても、主催者が性能調整を試みていることは、シーズン全体を考えれば自然なことだった。

そうされるのがいやなら、レギュレーションを作るサイドにならなければならないが、日本のメーカーは、現状それができていない。少なくとも、事前に察知して対策する時間を稼ぐことを考えるなら、懐に入り込む算段が必要か。

ともあれ、開幕戦までに、燃料の使用料や流入制限が施行され、ハイブリッド車には厳しい状況になっていた。ハイブリッド車の唯一の参加車はトヨタTS050 HYBRIDであり、要するに、トヨタTS050 HYBRIDに厳しいレギュレーション、ということだ。

このレギュレーションで、特にストレートの伸びがノンハイブリッドに有利になることが想像されていた。特にルマンは長いストレートがタイムを左右する。だが、スパ-フランコルシャン6時間では、それでもトヨタTS050 HYBRIDが圧倒的に速かった。これを見た主催者が、最も力が入るルマン24時間に向けて、さらに厳しい性能調整を入れてくることも考えられる。

一方で、トヨタのチーム内に、チームオーダーが発令されているのではないか、という憶測も存在する。これは“チームとしては当然のやり方だが、“フェルナンド・アロンソを勝たせるため”となると話が違ってくる。

ガズー・レーシングとドライバーの間でどういう契約になっているのかは知るよしもないが、少なくとも、アロンソに華をもたせるために我慢しなさい、という項目は存在しないだろう。

スパ-フランコルシャン6時間のような状況では、チームとしては無用な争いで万一2台が接触リタイアというリスクを回避するために、無駄な争いをさせないように指令することは普通のことだが、今回のスパ-フランコルシャン6時間のレース終盤の2台のペースは表面化している限り、7 トヨタTS050 HYBRIDの方が上に見えた。

ただし、8 トヨタTS050 HYBRIDのアロンソは、すでにゴールーまでクルマを運ぶことが最優先だったので、ペースを緩めていた可能性がある。だから2番手を走るコンウェイに、“無理せずポジションキープ”が伝えられたと考えられる。

◆ルマンに向けて錯綜する思惑

しかし、スパはスパ。極論をいってしまえば、ルマンだけが目標と言ってもいい。インディカー・シリーズのインディ500も同じだ。三冠を目指すアロンソにとって、ではなく、参加する全員にとってだ。アロンソはもちろん、チームメイトの一貴もブエミも、もう1台の可夢偉もコンウェイもロペスも。もちろん、レギュレーション変更によってライバルになるかもしれないレベリオンのドライバーも。

24時間は、とてつもなく長い。

そして、勝ちたいのはトヨタも同じ。トヨタは7でも8でも、どちらが勝っても悲願のルマンウィナーになるが、チーム内に、どちらかを勝たせたいと思う回路が存在するとややこしくなる。

耐久レースの理論を思い出す。「6時間までなら1台でいける。12時間になると2台が必要。24時間は3台ないと戦えない」。24時間をレーシングスピードで走るの過酷さが忍ばれる言葉だが、今年トヨタは2台体制でルマンに参戦であり、この理論からすると、24時間を闘い抜くためには、2台が無用な闘いをしないことが必須条件になる。

いずれ勝ちたいドライバーをどうコントロールするか、ルマンという大きな壁を超えるために、基本的なモーターレーシングの機微をトヨタは試されることになりそうだ。

[STINGER]山口正己
photo by GAZOO RACING

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