メーカーにとって都合のいい規則になったから復帰する?
◆ホンダがF1に復帰する。参戦は2015年からで、マクラーレンにエンジンを供給する、というのはすでに既成事実のように広まっていて、単に正式発表を待つだけの状況だったから、気になったのは、復帰の理由だった。
◆マクラーレン・ホンダが復活する。最強伝説の再現に期待がかかる。しかし、少し冷静な見方も必要だ。
◆ホンダのF1復帰に対して、”メーカーの都合に合ったレギュレーションになったから参戦する”というような受け取り方になっている。伊東孝紳社長もそんなイメージを理由に挙げた。しかし、そもそもF1GPが世界一を争う高度なテクノロジーで戦う世界であることを知っていれば、この答えには若干の説明が必要だ。
◆世間的な分かりやすさからいえば、エコを考えました、という方向のレギュレーション変更がメーカーにとって参加の意義を見いだす理由として、あながち間違ってはいない。というか、FIAは自動車メーカーの参加を推進するためにレギュレーションを変えたのだと思う。しかし、それはメーカーが理由を付けやすい、という理由であることを考えておきたい。
◆そもそも与えられた燃料をいかに効率よく燃やすかという意味で、レーシングエンジンは、とっくの昔からエコエンジンと同じ方向を目指しているからだ。レギュレーションが変わったことは、分かりやすくなっただけで、本質は変わっていないのだ。
◆一般常識としては、F1エンジンとエコエンジンは、まったく反対の目標に向かっているように見える。だが、考えれば両者が同じであることはすぐに分かる。燃費がいいエンジンなら、燃料が少なくて済む。燃料が少なければ重量が軽く済み、速く走るためには重量が軽い方がいいに決まっている。F1はレギュレーションが変わろうが変わるまいが、はるか昔から高効率を追求したまさにエコ方向なのだ。使い方が速く走ることに特化しているからそう見えないだけなのである。
◆タイヤにも同じことが言える。エコタイヤは、長持ちしてグリップがよく安全性の高いタイヤが理想だ。F1タイヤがまったく同じであることが誰にでもわかるだろう。けれど、F1とエコは正反対の印象がある。それは、F1タイヤがレース距離だけもてばいい、ということからの誤解だ。実は、長持ちしてグリップがよく、安全性が高い、というエコタイヤの理想を凝縮したのがF1タイヤなのだが、ブリヂストンがエコタイヤの発表会で、F1のノウハウを活かしている、という表現をしないのは、せっかくの実績を使えていないともったいないと常々思っている。
◆F1エンジンもタイヤも、エコのためにF1に参戦して研究を続けている、と言ってしかるべし。もともと、究極の効率を求めているのがモーターレーシングであり、その最高峰がF1GP、ということだ。F1GPは世界選手権であり、文字通り世界一を競う。だからこそ、チャレンジンする。ダウンサイズになったからではなく、最高峰で勝つことが難しい、つまり最高のテクノロジーが要求されるF1GPだから参戦する。ホンダのチャレンジがそうであってほしいと思う。
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