懐かしのメキシコGP
◆メキシコGPに初めて行ったのは、1987年。鈴鹿サーキットで行なわれる日本GPが初開催される2週間前の10月のことだった。すでに30年以上経っている。メキシコシティの様子も随分ちがゔものになっていることだろう。
◆1987年ころのメキシコシティの治安は劣悪、例えば町のスーパーマーケットというか雑貨屋は、直接商品を手にすることができなかった。直接手にできると、すべてかっぱらわれてしまうからだ。チョコレートでもたばこでも、金網の向こうに並んだ商品を指差して、金網越しに料金を渡すという具合の“システム”に最初は戸惑ったことを思い出す。
◆レンタカーで信号待ちしていると、少年が頼んでもいないのに窓を洗ってお金をせびる“商売”を信号のたびにやられた。最初は、勝手に洗って金をとるのはフェアじゃないぞ、と支払いを拒否していたが、新聞を売りつけたり、いろいろな“商売”があることがわかってきた。そのうち、口に含んだガソリンを吹き出して火をつけて人間火炎放射ショーを演じて見せる手合いも出てきた。こっちに向かってやられてはたまらないので、慌てて金を払いましたね。
◆ポルトガルやスペイン、ブラジルも同様だったと思うけれど、最近はこの“商売”をとんと見かけなくなった。街中は、アルコール燃料の匂いが甘く充満し、フォルクスワーゲンとゴルフばかりが走っていて、ゴルフは、GOLFではなく、GOLという名前だったのがなつかしい。
◆そういえば、海外でいつも悩んだのはチップだったが、いまでも、“チップ”が必要なのは、アメリカのレストランだけではないかという気がするが、チップという概念は、時代と共になくなってしまうのだろうか。経済の変化と共に、生活様式も変化して、世の中どんどん暮らしやすくなっていくのはいいとこだけれど、面白みがなくなっていくような気もしたり。そんな気分を思い出しながら、週末のメキシコGPに備えることにしよう。
photo by Ferrari