タックインという昔話
◆すでに昔話になるので、もしかすると、間違っているかもしれないけれど、富士スピードウェイの100Rを、エンジンがノーマルのプロダクションカー(要するに最もポテンシャルの低いFFのエンジンノーマルでロールバーが入って足だけ固めたレース車両)で走るときのアプローチの操作を思い出した。
◆コーナリングのきっかけを創るために、ステアリングを切り込んだら、パッとアクセルを放してリヤの荷重を抜いてテールスライドを誘発するやり方、かっこよく言うと“タックイン”てやつ。低ミュー路のダートラ出身なので、このやり方が正論と思っていたけれど、レーシングスクールの先生方(長谷見さんや星野さんや柳田さん。当然、みなさん、お父さんの方です)に笑われた。
◆しかし、最近でも、テールをズラスというか、向きを変える時の操作として、昔のように、ドターッとテールを流すことはないものの、クッ、クッと向きを変えることに、軽いタックインを使っているらしい。ただし、最近の市販FFは、35年前よりはるかにリヤの制御が効いていて、極端にやると間違いなく遅くなるらしい。ということは、運転手の仕事が別の方向になったのかも、ということだと思う。
◆そこで思い出したのは、やはり30年ほど前に鈴鹿サーキットで乗ったFJ1300と、20年ほど前にツインリンクもてぎのショートコースで乗ったサイドbyサイド。両方とも、こちらの操作に通従して、耳学問で知っていた挙動が、教科書通りに出るのに感心した。
◆当り前のことだけれど、コーナリング中にアクセルをオフにするとテールが出るし、アクセルオンにしてもテールが出る。挙動という意味でいくと、制御して高性能になった現代の市販車より、素の操縦性の方が面白い、ということか。
◆しかし、市販車はオーバーステアは御法度らしく、安全のために徹底してアンダーステアにセットされているという話もあったが、多分これは今も同じはず。要するに、市販車、特にファミリーカーは、コーナリング中にテールがうんぬんとかいう走りをするクルマじゃない、ってことで。
◆リニアな運転を楽しめるクルマに乗りたい今日この頃です。
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