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たったの顔面麻痺・その3 『野菜がオイシイ』

E藤先生の点滴バーで点滴を受けるようになって、症状が一気に治癒に向かった。

レーサーのH部N樹選手も実は顔面麻痺歴があり、レース界には驚くくらいの経験者がいた。取材仲間のHちゃんや、トヨタF1チームのNさんも”仲間”だった。だが、みなさん自慢することじゃないので、ということで知られていないだけだったのだ。

それはともかく、H部選手が、「だったらE藤先生だよ」という。「おかしいと思ってすぐに点滴を受け、ビタミン剤をいただいたら、2週間で完治した」。そうと聞いたら、即刻電話。「すぐきてください」という返事が終わらないうちに家を飛び出して青山。そこから治癒の曲線が一気に上向きになった。

しかし、そこまでの1カ月、日本の薬事法(直さないためにある、とも言われる。直すとリピーターである患者がいなくなるからだとか。そりゃ言い過ぎか)に則った真面目な治療をしていたことで、いやそれ以前にスペインの発病から医者に行くまで5日間放置してすっかり筋肉がなまってしまい、顔の筋肉は小さいのでリハビリもなかなか効果が出ず、今でも顔面左側がボワッとしたままだが、点滴を始めてしばらくして左目でウィンクができるようになって嬉しかった。ウィンクができて「ヤッタァ」と叫んで自分で恥ずかしくなったが(笑)。

そんな状態なので、不便だったのは食うことだ。左の頬の肉が弛緩しているので、気をつけないとホッペの内側を噛んでしまう。噛まないように気をつけて噛むという作業はかなり大変。しかし、結果としてゆっくり食うことになった。

生来、早食いがいいことだと信じて疑わなかった戦争体験者の親父に育てられた息子(私です)は、早食いが自慢だったが、大人になってガッツイて食べるのは恥ずかしいことだと気付いた。しかし、長年の習慣でゆっくり食うことができない。気がつくと、みんなの中で最初に食うものがなくなって、手持ち無沙汰で恥ずかしい思いを何度もしている。それが顔面麻痺のお陰でゆっくり食うようになったら、ふたつのいいことが起きた。

ゆっくり食うと、例えばキムチ鍋に入ったキャベツの甘みに気がついた。食感の大切さも見直した。さらに、ゆっくり食ったら1カ月で3kg痩せた。これは、ビールを控えたこともあると思うが、いずれにしても顔面麻痺にならなければなかったことだ。

なってよかった、というのは言い過ぎにしても、病気と共存する、というのが、一番軽いところで体験できたのはラッキーであった。

4につづく

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