F1の解説に広がりの敵
◆角田裕毅がテストで強烈なインパクトを世界中に伝えた。もちろん、日本でもいい感じの盛り上りだ。
◆しかし、嬉しがっているのは、いままでのファンだけ!? 問題というか、大切なのは、我々専門メディアではなく、新聞やテレビ、ネットの一般ピープルに届く場面にどう伝わるか。角田裕毅の敵は、その壁。立ちはだかるその壁をなんとか突き壊したい。
◆知り合いのレース関係者に訪ねたけれど、「あ、そうなの」という反応もあった。こっちはホッペタをつねってみたり、寝たら夢だったらどうしよう、となかなか寝つかれなかったというのに。情報の伝わり方が鈍くて、焦る。
◆3日間の合同テストを、DZNがライブ放送してくれたのはありがたかった。けれど、初日の、“マニアック”と言えば聞こえはいいけれど、マシンの細部をほじくっただけの薄ぺらで難解な解説は、視聴者を限定してしまってとてももったいなかった。言ってることの多くが興味がわかないことだった。一応専門家の私がこれでは先が思いやられる。
◆午後になると熱田カメラマンが平滑で幅広い知識と視点で興味深い話題に務めてくれたのでよかった。知識をひけらかすのではなく、知っていることを広く伝えたがっていることを感じる解説は聴いていて心地いいけれど、角田裕毅に期待がかかり、彼の顔だちや人柄、動じないマインドで、マニア以外に話題が広がる大きなチャンスに、“マニアック”限定という無神経とさ了見の狭さにはあきれるばかりだ。
◆今年は、DAZNもフジテレビNEXTも契約して角田裕毅だけでなく、マニア以外にも面白さ倍増間違いなしのF1をみてほしいと思っているけれど、伝える方がマニアにとっつかまってしまうと、折角のチャンスが逃げてしまう。
◆コロナには収束してほしいけれど、モーターレーシングには、とんどん拡散してほしいので、流す立場の方々に、緻密な配慮をお願いできればと心から思う春である。
photo by Honda