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モナコと言えば思い出す–2006年ミハエル・シューマッハの“秘策”


2006年F1GP第7戦、予選の最終セッション終了間際、燃料を減らして身軽になり、多くのマシンが最後のアタックに入っていた。その時点でのベストラップはシューマッハ。そのタイムを破るべく、アロンソが最後のアタック中だった。

コースの中で、ヘアピンに続いて低速の最終コーナーの“ラスカス”でそれは起こった。シューマッハが、コーナーを曲がりきれずにガードレールの寸前でストップ。注意を喚起するイエローフラッグが振られ、アロンソはアクセルを緩めざるを得ず、ミハエル・シューマッハのベストタイムに届かず、2番手に甘んじた。

モニターに映し出されたビデオ映像を見て、プレスルームからブーイングが上がった。シューマッハが、故意にストップしたように見えたからだ。故意に? コース上に止まれば、後ろから来るアロンソの走りを邪魔することができる。モニターに映し出されたフェラーリは、ラスカスに向けてまず右にステアリングを切った。舵角を保ったまま、もしくはさらに切り込んでコーナーを曲がるのが普通だが、シューマッハは、右に切り込んだ次の瞬間、明らかにステアリングを左に戻したようにも見えた。

プレスルームのモニターに、“審議中”の文字が出た。裁定を待たずに開かれた恒例のトップ3インタビューで、シューマッハ、やや緊張の面持ちでしばし伏目勝ちに見え、アロンソは、苦虫を噛み潰した顔ををしていた。

“事件”の瞬間、BBCの放送席にいたホンダのナンバー3ドライバーだったアンソニー・デビッドソンは、その瞬間に、“やりやがった!”と叫び、マクラーレンからフェラーリに移籍が噂されていたライコネンは、故意だ、と言った。スーパー・アグリの鈴木亜久里代表は、“個人的な意見としては、やったな、と思った。でも、故意かどうかは本人と神様しか知らない。”とコメントした。

23時20分、一旦は“無罪”が決定したかに見えたシューマッハに対して、全タイムを抹消し、グリッド最後尾からのスタート、という裁定が下された。

セナとプロストが、激しいライバル争いを展開していた15年ほど前、似たような事態があった。あるレースの予選でトップタイムをマークしたセナが、“そこに誰かが止まっていたら最も嫌だ”と思えるコーナーの立ち上がりにマシンを停めた。セナは停止したマシンを降りると、トラブル個所を確認するようにリヤを覗き込んだ。セナのマシンに、止まらなければならないトラブルがあったとは、チームは発表していない。プロストはしてやられたのだ。しかし、それが嫌なら、セナより先にトップタイムを出せばいいだけのこと、という見方もあり、セナには、罰則は下されなかった。しかし、今回は、シューマッハをクロとする判決が下された。時代が変わったのか、それとも、別の何かが作用したのか。

シューマッハは、予選第一セッションでクラッシュしたフィリッペ・マッサと共に、モナコGPを最後尾からスタートすることになった。抜きにくさでは屈指のモンテカルロの市外地コース。前にいるスーパーアグリの2台をスタートの1コーナーまでに抜けなければ、スーパーアグリの二人が、止まって追い越させるくらいの“気遣い”をしない限り、追い越せる可能性は極めて少ない。スタートから1コーナーまでの間に、フェラーリのレースが終ってしまうかどうかがかかっていた。

レースはフェルナンド・アロンソのルノーが優勝した。最後尾からスタートしたシューマッハは、抜きにくい公道コースで5位まで挽回したが、それが限界だった。

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