F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

	F1で巡りあった世界の空。山口正己ブログ

AI時代のF1

競争の分野では、運転を理解したAI登場はしばしオアズケ?

世をあげてAI時代の到来らしい。進化は素晴しいし、物事が整理され、効率が限りなく高まることはいいことと思う。けれど、いいことばかりとは限らない。

AI(人工知能)と言えば、チェスや将棋でコンピュータと人の闘いが最初に話題になったが、チェスや将棋は、AIが勝つに決まっている。駒の動かし方は無限大の組み合わせはあるが、駒が動かしかたは制限されていてその順列組み合わせで勝負が決まる。いわゆる“奥の深さ”が起きるのは、感覚をもった人が戦うからで、そこには心理的や精神的な領域で、ある意味戸惑いが出る。けれど人工知能には、戸惑いはない。常に冷静に最適な次の手を打てる。演算の速さや正確さは、間違いなくAIの勝ち。だからチェスや将棋は、AIが勝つ。

ハードの設計も似たような状況かもしれない。予算に上限がほとんどない兵器、特に飛行物体の場合、AIが設計したものが最も優秀になるだろう。市販車も、“コスト”という枠があるために、安くて壊れない、要するに日本車が代表するようなクルマは、AIが優秀なデザイナーになるだろう。けれど、F1マシンのデザインとなると、少なくとも人間が運転している限り、ちょっと違う方向になりそうだ。

現在、メルセデスが最強で、フェラーリとレッドブルが続くという勢力図だが、メルセデスの優位はパワーユニットにあり、もし全車がメルセデスのパワーユニットを搭載したら、最も速いのはレッドブルと言われる。そのレッドブルのデザイナーのアドリアン・ニュウェイは、今でも手書きでデザインする。コンピュータとは縁遠い存在だ。

もちろん、設計段階で種々の演算はコンピュータを使うが、それは部下に任せる。最初のアウトラインを引くのがニューウェイの仕事。他のチームはレッドブルよりかなりAIの方向のはずだが、ニューウェイの設計したF1は、1990年ころのレイトンハウス以来、高いポテンシャルを持つことを歴史が証明している。

ニューウェイがAIに勝っているのは、F1が、自動車という地上に4本のタイヤだけで接している移動媒体という特殊な存在であり、地面と関係は、タイヤというスタティックではない、ある意味フニャフニャした物でつながっているからだ。

◆競争自動車は別物?!

さらに、路面からの凹凸を、中に乗った人間にダイレクトに伝えないために、クルマにはサスペンションという媒体が挟まって、これもある意味フニャフニャと車体を支えている。これはF1でも同じだ。

さらにややこしいのは、路面状況やコーナーの形、路面のアンジュレーション、さらには周囲のライバルの存在や天候など、影響を受ける大小の事柄の総てを運転者が瞬間瞬間に感覚しながら高速移動する。したがって状況は時々刻々と変化する。ここでも、全体的にフニャフニャ状況の中で運転という操作が行なわれることになる。

いかにAIが優れたものになったとしても、そのフニャフニャした状況を理解してデザインすることは、まだまだ無理と思える。これがあるから、自動運転のF1ができたとしても、限界ギリギリで競争をする限り、少なくとも現時点では人間が設計して人間が運転するマシンに軍配が上がるだろう。

タイヤの立場に立ってみるとよく分かる。ある動きに対して、タイヤに入力が入った時に、次のバンプでさらに別の入力が加わる、という場面はいくらでも想定できる。フニャフニャした中で出現する二次的ではなく三次的、四次的な動きを想定して設計することをAIが完遂するには、まだまだ時間がかかるだろうな、というのが今のところの結論。

そして実は、フニャフニャしているところに“奥の深さ”や面白さがある、ということも、AIくんが理解するには、もう少し時間がかかりそうかな、と思う今日この頃。

photo by Formula E

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