シロモノ家電とクルマはいよいよ同列?!
◆クルマに本来の面白みが消滅しつつある昨今、それが反映して、面白い試乗記におめにかかることがめっきり少なくなった。特に女性のジャーナリストと称する方々の文章の多くは、冷蔵庫や掃除機の紹介と同じように感じてしょうがない。
◆それは、“走り”というクルマの根本的な存在価値が伝えられていないからだ。クルマは走ってなんぼなので、走りの部分をきちんと伝えるのが大切と思う。第一、“試乗記”というなら、ちゃんと走って、そのことが書かれた文章を読みたい。
◆もちろん、商品としてクルマを観たとき、走り以外の使い勝手は極めて重要で、所有する喜びの中には、カップホルダーがどこについているかとか、そうした細かい要素も知っておきたいが、試乗というからには走ってほしいのだけれど、しかし、なのだな、これが。
◆そもそも現在売られているクルマのうち、走ることをきっちり考えているものがどれだけあるのかと思うと、頭がクラクラする。走りがおざなりにされて誕生しているクルマばっかりになっているようなので、これは彼女たちのせいではないかもしれない。
◆ぶつからないクルマ、というフレーズが流行ってしばらくたった。ぶつからないのはクルマじゃなくて、運転する人間じゃないの? とスバルの人に言ったら、「仰るとおりなのですが、“ぶつからないクルマ、ください”とデーラーにいらっしゃるお客様が多いのです」と言われて思わず絶句した。要は、売れるが勝ちってこと? 少なくとも売れなきゃしょうがないから、白旗だ。
◆ミニバンは、7人乗れることが売りになった。時には、観葉植物を立てて積めます、というのもあったりした。観葉植物を積むことなんてあるの?ってことだけでなく、7人乗る機会がどれだけあるの、と思わず突っ込みたくなるけれど、みなさん、それがありがたいと思うようで、7人乗れるミニバンはたくさん売れている。
◆“走り”が肝心、というと、走り屋だからと思われそうだが、そうではない。どんなに遅いスピードでも、移動手段としてのクルマは“走り”が肝心だ。と言っても、“キビキビ走りますとか”、パワーが十分とかではなく、運転者にいかにリニアな感覚で扱えるか、そこが知りたい。
◆パワーじゃない、という意味で、ホンダのS660や、マツダのデミオは、ちゃんとしている。初代のダイハツ・コペンもそうだったが、カーオーザイヤーで10点入れたら、先輩に“バカじゃないの?”といわれた。悪いけど、あなたの方がバカです、とはいえないのでえへへと笑ってごまかした。
◆S660とコペンは、ホンダNSXタイプRと同じフィーリングだった。もっと言えば、マクラーレン12Cと同じ。パワーがあるかどうかではなくて、アクセルを踏んだだけ加速して、ブレーキを踏んだだけ止まり、ハンドルを切っただけ曲がる、ということだ。これがちゃんとしていないクルマがビックリするくらい多い。
◆最近、軽自動車がなかなかいいと評判だが、それはひとつに重量の軽さがあると思うが、作り手が、きちんと向き合って作っているからではないかと思う。小さいサイズに無理矢理詰め込んで、大きく見せようとしていた時代はとっくに終わり、次の領域に入ったからではないかと思うようになった。
◆軽ではないクルマたちも、そこに戻って作られんことを。そうなるために、試乗記には、きちんと走りのことを書いてほしい。クルマは移動するための道具なのだから、という前に、そうして影響して社会貢献してこそ、ジャーナリストなのだから。