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赤城明さんの訃報に触れて–レイトンハウスの衝撃と思い出・その2

レイトンハウスで活躍した後、フェラーリに抜擢された。イタリアのTVの解説者を務めた後、モンツァの支配人に就任した愛すべきイーヴァン・カペリ。

◆1986年に、翌年レイトンハウスでF1に参戦するイーヴァン・カペリが富士のF3000(現在のスーパーフォーミュラ)に参戦したことがあった。カペリは、日本のレースに驚いた話が面白い。カペリが初走行の後にピットに戻って、セッティング変更を提案した。エンジニアは、これでいいというので、なんでだ? と尋ねたエンジニアから、“一番速い星野のセッティングだから”と言われたカペリは、エンジニアを星野さんのピットに連れて行って、「これが星野でボクはイーヴァンだ!!」と言ったという。ヨーロッパと日本のレースの思考の仕方が分かって面白いと思った。

◆そのレースで、カペリがどんなエンジン回転を使ったかがわかる証拠写真を撮った。『auto technic』誌のどこかに見開きで載っているはずのその写真は、タコメーターを写したものだったが、スパイ針が、大きくレッドゾーンを越えて限界点に貼りついていた。カペリの感覚は、“常に全開”だった。

◆エンジン回転といえば、イモラでカペリがF1のテストを担当した時の話も面白い。まず、ギヤボックスか何かの慣らしが必要だった。慣らし運転なのでエンジン回転はこれこれ、とエンジニアが伝えた。カペリはうなずいてピットを出て行き、言いつけを守ってエンジン回転を下げて走ったが、それはピット前だけだった。当時はテレメータリングで情報は届かなかったが、遠くでも回転が上がれば音が聞こえてバレバレなのに、見えないところでは全開で走ってしまい、次の周も、ピット前はゆっくり走る健気なふりをしたイーヴァンくん。

◆日本GPの際には、鈴鹿の前に東京で数々のレイトンハウスイベントが行なわれた。写真展もあれば、千葉の新東京サーキットでレイトンハウス・カート大会も行なわれた。ポールポジションはグージェルミン、3位がカペリ。逆だったかもしれないが、どっちでもいい。2位が私だったので。F1ドライバーに割って入った金字塔(笑)。

◆そのカート大会に、知り合いが発売直後のR34GT-Rの広報車を借りてきていた。当時BMWのドライビングインストラクターだったカペリがちょっと乗せてよ、と走り出した。新東京のコースを縦横無尽の魅せる走り。拍手喝采を浴びた後に、ドーナツターンをかまそうとしたのだが、ニッサン肝入りの“アテーサ4WD”は、リヤが滑るとフロントが食いついてスライドを停める機構だから、何度やってもうまくできない。

◆そこにマウリシオ・グージェルミンが割って入って、しばらくエンジンを空吹かしした後に、やわらアクセルターンを決めた。コンピューター・オタクと言われたマウリシオの真骨頂。コンピュータを騙してしまったのだ。そこで終わればよかったが、ジャンケンを教えたら勝つまで辞めないのがイタリア人レーサーだ。

◆悔しいカペリは、躍起になってドーナツを決めようとするが何度やってもできず、そのうち縁石にリヤタイヤをぶつけて、ホイールを割ってしまった。あれほどしょんぼりしたイーヴァンを見たことがない。

photo by [STINGER]

 

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