F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

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	F1で巡りあった世界の空。山口正己ブログ

F1グランプリという名の“ショーケース”

ショーケースとしての機能があるF1会場は、だから美しい。

◆F1には、二つの側面がある。エンターテイメント性と、ショーケースとしての役割。後者が日本で深く理解されていないと思える場面にときどき出くわす。

◆エンターテイメント性でいけば、日本のレース、特にスーパーGTはかなりのレベルにある。斜陽のDTMがラブコールを送っていることからもそれが伺えるのだが、ショーケースという役目は、F1に及ばない。F1は、観る側にも作る側にもインパクトをもって浸透している存在、ということだ。

◆多くのモータースポーツ関係者はF1のことを知っているようで、実はこの辺りになると知らないことが多い。世界中のどのレースを観ても、ショーケースとしての役割は、F1とは並べられない。

◆エンターテイメントの側面では、例えばスーパーGTやアメリカのナスカーが傑出していることは知られたところだ。特にナスカーの場合、今でもスチール・ホイールを義務づけ、共通のシャシーにスロットカーのようなボディをかぶせ、徹底したイコールコンディションでの闘いを演出し、アメリカで大人気のフットボールやバスケットボールをしのぐ人気イベントとして君臨している。

◆しかし、F1は、あらゆる企業や産業のショーケースとしての役割がある。ショーケースとは、企業のテクノロジーレベルやブランドイメージのクォリティの高さを展示する場所としての機能だ。ショールームと言ってもいいが、日本では、この“役目”があまり理解されていない。最高のテクノロジーでマシンを創り、運営し、整理整頓世界選手権として美しく見せることがF1の役目であり、それが“エフワン”というブランドの大きな魅力になっているという点だ。企業は、だからF1に参戦し、ブランドイメージ向上に活用する。

◆すでに昔話になるが、作家の村上龍さんと1988年に16戦中13戦をご一緒して世界各国のレースを見て回ったが、4~5戦目のイギリスGPのシルバーストンのコースサイドで甲高いエンジン音を聴きながら、村上さんから、「金かかってる音だなぁ」と言われ、さすが作家、質素なフレーズでF1のクォリティを見事に言い切ったと感心した。

◆ニューヨークを中心にトランペッターとして活躍していた近藤等則さんは、イモラでフェラーリV12の音を聞いて、「フェラーリが啼いている」という名文句。「エキパイをチタンにすれば、もっと高周波になるんだけどね」と京大機械工学部出身のエンジニアの感想も追加した。

◆お二人ともレースの門外漢だが、エンターテイメイトとしてだけでなく、産業のショーケースとしてのF1GPを、傑出した皮膚感覚で理解したことを伺わせた。F1は莫大な資金力によって、洗練とハイクォリティを創造する世界ということに気付いたのだ。

◆パドックでチームのホスピタリティに接し、他のカテゴリーとは一線を画するマシンのペイントのレベルや、ピット内が整然と整理整頓されているのは、まさにF1の会場が、ショーケース、関連企業のショールームのとして機能しているからに他ならない。

◆ナスカーもF1も、観客にとっては、スピードや迫力を提供するという意味ではまったく同じ存在だが、グローバル企業のショーケースという側面でF1は別格の存在。理解されていないのはここだ。

◆金をかけてエンジンを開発すれば、 摺動抵抗が極限まで減らされてパワーが上がるだけでなく、美しい機能美あふれる外観になり、音までが潤沢な資金を思わせるレベルに到達する。V12時代に比べれば、現在のハイブリッドのエンジン音は迫力では負けているが、1600ccと回生モーターで1000馬力を越えるパワーユニットも、今年は耳を澄ませば“金がかかっている”ことが感じられる音に近づいている。

◆F1にショーケースとしての役目があるという視点で、次のロシアGPや日本GPを眺めると、新しいF1が見えてくるかもしれない。鈴鹿では、現場で観察すると、F1の凄さは、音や匂いだけではないことに触れられるかもしれない。この機会に、鈴鹿はできれば現場で、どうぞ!!

photo by [STINGER]

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