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場外バトルの判定–スポーツ選手と犯罪者

2位表彰台のマックス・フェルスタッペン。目つきは、まだ通常テンションに戻っていない?!

◆F1ブラジルGPの44周目に起きたマックス・フェルスタッペンとエスティバン・オコンの接触は、大きな波紋を呼んでいる。

◆波紋の理由は、レース後のマックス・フェルスタッペンの行動だ。体重計測のために、ブレンダン・ハートレーやバルテリ・ボッタスと共に列に並んでいたエスティバン・オコンに、マックス・フェルスタッペンが眉をつり上げて“突進”し、何やら抗議の言葉を投げた後に、三度に渡ってオコンの胸ぐらを突き飛ばした。まずいことに、その模様がビデオに納められ、世界中に流れてしまった。

◆当然、スポーツマンシップに問題ありとして、FIAはマックス・フェルスタッペンに“6カ月以内の公共サービス”を命じることになった。ゴミ掃除などのボランティア作業を行ないなさい、ということで、そこでも格好のネタになることになった。

◆一連の流れを見て、中嶋悟さんの現役時代にトレーニングを指導した東海大学の体育学教授に伺った“スポーツマン”の資質の分岐点の話を思い出した。

◆曰く、「優秀なスポーツマンは、“闘う”というテンションが高い方がいいけれど、そのテンションが限界を越えると犯罪の領域に入ってしまいかねない」。限界とは、社会的許容範囲のことだ。

◆そのテンションが低いのでは、世界に名だたるアスリートにはなれないけれど、高すぎでいけない、ということだ。今回のMAXくんは、少なくともレース後にそれを越えてしまった。

◆ニキ・ラウダのこんな話も思い出した。リタイアしたラウダがコクピットから脱出しようとしていた時に、オフィシャルが不用意にラウダの肩ベルトを引っ張り上げた。ラウダは反射的にオフィシャルを殴った。そして一言。「殴ったのは私が悪い。けれど、レーサーのテンションが通常モードに戻るのに時間がかかることを知らなかったのは、オフィシャル失格だ」。

◆星野一義さんが、フォーミュラからの引退レースでヘルメットを投げた話も有名だ。これらは、絶対にやってはいけない行為であると共に、レーサーが走行中にどんなテンションがかかっているかを映し出すものだった。

◆こんな話もある。テニスでボルグとマッケンローが覇権争いを展開していた頃だ。マッケンローは、審判の判定に不服だと、コートに倒れ込んで抗議を態度で表明するのが得意技。紳士淑女のスポーツであるテニスを台無しにする行為だったが、これを尋ねられたライバルのボルグは、「うらやましい」と答えた。「視力や判断力が我々より劣る線審が多くいる。彼らは、だから選手ではなく線審なのだ。我々がセーフと思ったボールを、アウトと判定してしまう。抗議したいことが度々あるけれど、ボクはマッケンローのようにはできない」。

◆今回のマックス・フェルスタッペンがセースかアウトか、さて、判断するのは誰?

[STINGER]山口正己

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