チリの世界地図?島国だけではないゴーン事件の国際性・その4
日本の世界地図は日本が真ん中にあるけれど、世界的には極東の端っこだ、と思っていたら、チリの世界地図はひっくり返しらしい。世界の“常識”はぜんぜん違う、という視点で見たゴーン事件の行方。
(その3からつづく)
その4 東京拘置所
◆ガチャッ、バタンッ。
◆ここは東京拘置所。霞が関から着いたばかりの検察官が取調室に入り、
ドアが閉まる音が冷たく響いた。パイプ椅子に座ったまま待たされていたゴーンの目の前に、検察官がヨイショっ、と大げさに声に出して座った。
◆「さぁ、今日も始めるか? その前にな、逮捕から今日で10日目だろ? 10日目ということで今日はな、特別にな、いいか?特別だからな、希望することを一つ叶えてやろうと思う。え? どうだ? いい話だろ? 何かしたいことがあるか? さぁ言ってみろよ」。
◆いつもはすぐに取り調べに入る検察官が、今日は、ぞんざいな言葉遣いだが、なんだか優しい。傍らに座っていた通訳も、いつもと違う様子に少し戸惑っている。
◆「いいんですか?」。
「ああ、もちろんだ。けどな、一つだけだ。特別なことは一つだけ」。
そう言って、検察官は、禁煙のはずの取調室でタバコに火をつけた。
◆「ふぅー、どうだ? 何かあるか? したいこと」。
「電話をしたい」
「んっ? 電話? そんなことでいいのか?」
「はい」
「弁護士ならもう何度も話しているだろ」
「弁護士ではない」
「じゃあ、だれなの?」
「私の相談相手」
「相談相手? 誰だ?そりゃ。ま、いいや。かけてみな。ほら、電話」
検察官はフル充電された携帯電話をゴーンに渡した。
(つづく)