チリの世界地図?島国だけではないゴーン事件の国際性・その5
日本の世界地図は日本が真ん中にあるけれど、世界的には極東の端っこだ、と思っていたら、チリの世界地図はひっくり返しらしい。世界の“常識”はぜんぜん違う、という視点で見たゴーン事件の行方。
(その4からつづく)
◆「ここからは、しばらくの間、私一人で大丈夫だから、向こうの控室で待機してくれないか?」
東京拘置所の同室にいた2人の同僚を追いやるように担当検察官が言った。彼に促されるのに従って、同僚2人は取調室を後にした。担当検察官から受け取った携帯電話をゴーンは耳に当てた。
◆プルルゥ。「あ、もしもし。私だ。ゴーンだが」
「あ、どうも。おつかれさまです。えっ?なんで、電話を?」
「いやぁ、検事さんがやさしくてね。どこかに電話を掛けたいなら、掛けてもいいぞって、携帯を貸してくれたのさ。それより、本社での記者会見は終わったか?」
「はい。午後10時30分に始まって、ついさきほど終了しました」
◆「どうだった?」
「はい、一応はすべてMrゴーンの私利私欲による仕業である、ということをメディアに印象づけることには、ほぼ成功したんじゃないかと」
「そうか、それは良かった。例の偉大なるミスター弁護士先生から、逮捕されてから、どうなるか、ということについて、じっくりアドバイスを受けていたからね。逮捕の場所が、まさかビシネスジェットを降りた途端に、と思ってもいなかったから大変だったよ」
◆「いま、電話のそばに検察官は、総てをご存知の方なんですか?」
「ああ、もちろん。でなきゃ、キミに電話なんかできないだろ。で、官邸の動きは?」
「はい、フランスのルノー本社がフランス政府を通じて早速、外交ルートで官邸に探りを入れてきたりしているようです。やはり今回のことに官邸が絡んでいないか、ということを確かめたいようです。そういう意味では官邸も、すべて想定内のようでして、順調に対処してくれています」
「まぁ、予想通りの展開で何よりだ。北京でも予定通りなのかな?」
「はい。早速、フランスの経産相がウチの大臣との接触を探ってきています」
(つづく)