アロンソはシューマッハよりも上?!
1月3日で50歳の誕生日を迎えたミハエル・シューマッハと、今年、F1を休戦して新天地を求めるフェルナンド・アロンソ。最近、なにかと話題に上がる二人だが、実は二人はまったく違うタイプのドライバーと言われる。
◆“滑らせる”/“滑らせない”、二つのタイプ
F1ドライバーには、“滑らせる”のを好むタイプと、“滑らせない”タイプがいる。アロンソもシューマッハも滑らせるタイプ。もちろん、滑らせるといっても、限界ギリギリのところでの話。慣性でドリフトするマシンをぎりぎりの状態でコントロールできるということだ。シューマッハとアロンソのドライビング能力の高さを物語る。
◆「動」のシューマッハと「静」のアロンソ
「二人とも速さや決断の素早さは飛び抜けていますが、ひとつ違うのは、フェルナンドは比較的“静”で、マイケルは割りと、カッとして、時にはバシッと、文句や意見を言うようなところがあったけれど、フェルナンドはそうでなく、物事を静かに受け止めているな、というような感じです」
この意外な意見は、ブリヂストンとフェラーリでF1GPの頂点を体験した浜島裕英エンジニアのコメントだ。シューマッハとは、ブリヂストンのタイヤエンジニアとして、アロンソとは、フェラーリのチーム内で、二人のチャンピオンを密接に“観察”する機会があった。トップドライバーは全員「動」の部類と思ったが、そうではなかった。
また、限界を越えるタイプと越えないタイプに分けると、アロンソは、限界内をキープし、その範囲で最速を探し出すタイプだが、シューマッハは時として限界を超えて攻めるタイプだったと言われる。
◆勝負への執念では、アロンソはマイケル以上?!
浜島エンジニアは、こうもコメントしている。
「全盛期のシューマッハは、勝負に対して執念を持っていて、最後まで、絶対に諦めない人でしたが、アロンソはマイケル(シューマッハ)以上じゃないかなという気がします」
浜島裕英エンジニアは、F1に行く前に日本でレースを担当していたが、その時代に、星野一義との絶妙のコンビでタイヤ開発を行なっていた。パッと走ってすぐに全開走行ができ、タイヤに対するフィードバックを的確に伝える能力は、頂点を闘うドライバーとして非常に重要な素養だが、浜島エンジニアは、この点で星野を高く評価していた。F1でシューマッハと付き合うようになって、シューマッハが星野とまったく同じだったことに気がついたという。
「どらちも、開発テストで走り始めるとほぼ瞬間的にグランプリモードのスピードで走ってくれて、開発テーマを言わなくして、こちらが知りたい情報を伝えてくれるところはそっくりでしたが、もしかしたら、フェルナンド(アロンソ)はもっと上かもしれない」
シューマッハは、前人未到、7回のワールドチャンピオンを奪っている。対するアロンソは2回だけ。記録ではシューマッハが上だが、ポテンシャルではアロンソが上? アロンソがF1に戻ってくる日を待ちたいのは、こうした理由からだ。
[STINGER]山口正己
photo by Jiri Krenek/activepictures