F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

	F1で巡りあった世界の空。山口正己ブログ

ブラジルVISA事件・その1

 

昔は若かった。30年前。

◆ブラジルといえば、忘れられない事件がある。すでに御存じの方は御存じだが(当たり前か)、今では考えられないことである。それは、ブラジル渡航にVISAが必要だった時代の話だからだ。時は、ホンダF1第二期、アラン・プロストとアイルトン・セナが闘っていた1988年シーズン開幕前に遡る。

◆今では、スペインのバルセロナがF1テストのご指定会場として定着しているが、当時は、たぶんバブル時代の真っ只中で、どのチームも予算がふんだんに使えたせいか、ブラジルでシーズン開幕直前テストが行なわれることがあった。リオのカーニバルでお馴染みのリオ・デ・ジャネイロのそのテストに向かう成田空港へのクルマの中で、“ん?”と気がついた。“もしかして、ブラジルって、VISAがいるんだっけ?”。

◆恐る恐る、今では考ええられないでかさで、持っていると腕が疲れる携帯電話で編集部に電話した。「あのさ、ブラジルって、VISA、いるんだっけ?」。“げげっ、何言ってんですかぁ!!”。かくて、そこから物語が始まった。

◆まず、日本の旅行代理店に電話したが、出ない。考えたら土曜日、半ドン(←死語?)だった。それでは、と、今回チケットを買ったロサンゼルスの東急トラベルアメリカのH川さんに電話した。アメリカはまだ金曜日だ。広川さんは、タイムラグがたっぷりある電話の向こうで困っている。“到着は土曜日の11時ですので、大使館の窓口が空いている時間に着けるかどうか。とにかく空港でお待ちします”。

◆成田からロサンゼルスまでの10何時間だったかの重苦しい旅を終えて、ロサンゼルスの税関を抜けてH川さんの出迎えを受けた。そこでH川さんからの提案。「もしすかるともしかするので、一応、行ってみましょうか」。JALと提携していた今はなきバリグ・ブラジル航空のチェックインカウンターに、知らんふりしてパスポートを出してみた。「VISAはどちらにありますか?」。やっぱり、気づかないワケがなかった。窓口の女性にていねいに挨拶をして、ブラジル大使館へ急いだ。

◆窓口が閉まる時間ギリギリで到着、VISAの発給をお願いする。ブラジルに知り合いがいると言えば発給が早くなるというH川さんのアドバイスで、レイトンハウスのドライバーだったマウリシオ・グージェルミンの名前を書こうとしたが、つづりがわからないので、簡単なつづりのAyrton Sennaにした。それを見た窓口の女性は、パスポートを持った手が明らかに震えて、こっちを見る目つきに尊敬の微笑みがあふれ、ほぼ瞬間的にハンを押してくれた。アイルトン、ありがとう。

◆しかし、本日は土曜日で、上司の承認のサインがもらえるのは月曜日になるという。なんたる。万事休すかと思ったが、月曜日なら、なんとか、確か3日間行なわれるテストの最終日に間に合う。ということで、何にも用事がないのに、空港に近いレドンドビーチのホテルに二泊することになった。

◆明けて月曜日、無事にVISAが貼られたパスポートをもらって、H川さんが予約してくれたバリグでリオに向かったが、問題は、日帰りになる、ということだった。ブラジル日帰りは、自慢にはなるかもしれないが、フィルムを間に合わせる方が先決、そんなバカ言ってる場合じゃない。シーズン直前号を丸々1冊、そのテストの情報で作ることになっていた。

◆さらに当時は、フィルム写真の時代。電送写真という、モノクロ1枚送るのに15分かかって、料金が数万円、メールで送信なんて考えたこともない時代だ。現地で現像して、飛行機の中で写真を選び、ロサンゼルスに到着したところで編集部に情報を届けてレイアウトを先行し、成田についたら現像した写真をバイク便に渡して印刷屋に届ける、という作業が必要だった。

◆かくて、ブラジル日帰りを強行することになった。

◆まず、リオについたらレンタカーを調達、予約していなかったのでワンボックスだった。パスは用意してあったので、とにかくオートドロモ・リオ・デ・ジャネイロに向かった。今は、ネルソン・ピケサーキットと呼ばれていたが、その後オリンピック競技場に転用されたコースだ。

◆ニューマシンの写真を一通り撮って、ピットの様子を覗いて、リオの街中で写真屋を探して現像とベタヤキのプリントを頼んで、完成した写真を受け取って空港に向かいカウンターに並んで愕然とした。

◆「予約がありません」。後で分かったことだけれど、往路の飛行機に乗れなかった瞬間に、そこから後ろが全部キャンセルされていたのだ。完全に締め切りに間に合わなくなった。かくて、1998年シーズン開幕直前号の『GPX』は、私のドジで写真を届けられなかったせいで、巻頭の見開きページが、諸岡さんのイラストになったのだった。

◆ところが、話はここで終わらない。編集部に乗れなかった報告をして、JALのリオ支店で翌日、深夜便のチケットを受け取った。当時のチケットは、数枚つづりのカーボンコピーのものだった。搭乗時間の2時間前に空港に到着、まずはチェックインしてからクルマを返そうと思ってチェックインカウンターのある場所の前の道路にクルマを停めて、荷物をもってカウンターに向かった。

◆バリグのカウンターはなぜか空いている。ラッキーと思って窓口にチケッにトを出すと、全然ラッキーではないことが判明した。「アナタのフライトは、もう、飛ぶ時間ですよ」。ガ~ン。頭の中でドラがなった。

◆JALの支店で受け取ったニューヨーク経由成田行きのそのチケットの時間が、2時間間違っていたのだった。ゲゲっと叫んでへたり込みそうなこちらを観て、カウンターの中のオジサンは気の毒がって、ちょっと待ってください。マイアミ行きで乗り継げば、ニューヨークからのJAL便に間に合いますが、どうします? 急げば間に合います」。どうしますもヘッタクレなないのでお願いする。こういう時にビジネスクラスは融通が効く。

◆荷物をチェックインしてマイアミ行きに飛び乗った。離陸してあ~、とため息をついた瞬間に、大変な忘れ物をしていることに気がついた。レンタカー、チェックインカウンターの前に

年間20往復、これだけl行けば、ドジも起きる?!

置いたままだ!!

 

 

明日につづく)

photo by [STINGER]

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