振り上げた拳の収まり処がほしい!!
◆やるのかやらないのか、ギリギリまで心配させてくれた2020年F1GP開幕戦のオーストラリアGPが中止になった。開幕戦の金曜日のフリー走行が始まる2時間前の決定を、“遅すぎる”とかいうムキもあるが、なぜギリギリになったかといえば、それだけ深刻に各方面の懸念に思いを巡らせていたからだ。なにか策略があってぎりぎりまで引っ張ったわけではない。
◆仮に中止ではなくて決行したとすると、世間の風当たりがどうなっただろう。F1はたとえば参加している自動車メーカーやスポンサーが、満場一致で参加をきめているとは限らない。民主主義の国なら、多数決で決まる。例えば、決定権のある取締役が5人いたとする。賛成3:反対2ならGOがかかるが、2:3ならNGになる。要するにこの場合、一人が動いただけで可否がひっくり返る。
◆F1チームは10チームなので、チームの利益ある方向に、と思っても、各チームの国も違えばポジションも違うから、なかなか簡単にはいかない。例えば、スクーデリア・アルファタウリの場合、イタリアをベースにしているけれど、日本のホンダのエンジンを使い、サポートも受けている。イタリアと日本の事情は、位置だけでなく、慣習や思考回路も違う。
◆他チームも似たりよったりだから、なかなか十把一絡げで問題を解決するわけにいかない。グローバルに活動する国際的な立場は、スムーズに回っているときはいいが、混乱したり、今回のような状況になると、受け取り方も違ってややこしいことになって、あちら立てればこちらが立たずになる。そういう複雑な事情を抱えている10チームが集まって協議しても、落とし処はなかなか見つからないのは当然の帰結だ。
◆仮に延期したとすると、さて、どこに移動するかが問題になる。そもそも、機材をすべて運び込んだあとだから、間違いなく1戦分の予算は使っているから、どこかで補填が必要になる。日程も、簡単に移動できない。今年は、オリンピックという巨大イベントが控えているから、さらにややこしい。
◆ややこしさを加速する条件の中には、最終戦のアブダビGPが、“最終戦”という冠を条件に契約が成立している、というようなものもある。11月19日のアブダビGPの前にすべてをはめ込まなければならない。オリンピックは8月だから、9月から11月にすべてを詰め込まねばならず、先約行事が存在して、簡単にはいかない、ということだ。
◆と分かったようなことを言えるのは、いろいろ情報を仕入れた結果。知らない状況の中で、明け方からやきもきしたが、さて、一番困るのは、週末に向けてモチベーションを高めて構えていた相手が忽然と消えて、エネルギーが余っちゃっていることだ。
◆そのエネルギーが【F1-STINGER】の原稿という形で話題を提供するはずだったのだが、大元がなくなってしまった。振り上げた拳の行く先は、どこにしたらいいのだろうか。
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