イギリスでのF1GPの立ち位置
◆ロン・デニスがイギリスの医療機関に100万ポンドを寄付した話は、調べれば調べるほど深いものがあった。実はきっかけは、医療関係に従事する娘さんからの訴えだったという思わず涙のストーリーだが、さらに深く感じたのは、イギリスのモータースポーツのポジション。いまさらながら、モータースポーツがひとつの存在として認知されているイギリスが羨ましくなった。
◆イギリスは日本と同じ島国であり、クルマが左側通行であるところまでは同じ。だが、交通システムでひとつ大きく違うことがある。それは信号機。
◆日本では、赤信号で止まっていると、いつか青に変わるが、イギリスは、その前に黄色が点灯する。これはドイツも同じだが、要するに、“そろそろスタートするので準備よろしく”という意味だ。日本の信号は止めるため、イギリスやドイツの信号は走らせるため。どちらがいいかは意見もあるだろうけれど、基本理念の差を感じる。
◆そうしたイメージの中で、F1チームに対するリスペクトはきっちり等身大に認知され、ヒースロー空港の管制のノウハウに、マクラーレンF1チームのノウハウが流用されていたりする。
◆ヒースローは、世界一発着の多い空港として知られる。フライトのコントロールは、複雑に絡み合うが、マクラーレンF1チームが、レース中にチームの2台をにコントロールして、ライバルとの位置関係やタイヤの状況などを正確に計算して最適のタイミングでピットインさせるなど、緻密に読んでいることを知ったヒースロー空港が、そのノウハウの提供がマクラーレンに依頼したのだ。
◆イギリス中心とする8チームに対して、安価で安定した人口呼吸器の開発が依頼されたが、ここでもコロナに対して、モーターレーシングのノウハウが役に立っている。
◆一般社会からの認知レベルの高いイギリスが羨ましい。日本のレース界にも、役立てるポテンシャルがあるはずだが、それを期待するムードがないのがなんとも残念。
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