ストレートなレースが観たい
◆スーパーフォーミュラ第3戦の菅生は、興味深いレースだった。
◆セルジオ・セッテカマラが、世界レベルを見せつけて、コースレコードを記録した。スーパーフォーミュラには、富士スピードウェイのテストで乗っただけ。菅生はまったく初めてで、前日のセミウェットを走っただけだったのに、平川亮にわずか0.053秒差とは言え、最速タイムは見事だった。
◆チーム監督の本山哲は、元々菅生が大得意だったが、その本山がカマラに太鼓判を押した。運転の巧さだけでなく、すべてを素直に聞き、吸収しようとする姿勢の徹底ぶりが素晴しいと、何度も全日本タイトルを取り、特に難易度の高い菅生を得意としていた本山は絶賛した。
◆結果的には、温まっていないアドバン・タイヤがいかにグリップしないかを証明して、タイヤ交換直後の3コーナをまったく曲がれずにクラッシュしたが、世界の水準を示す貴重な参戦だった。
◆レースは、カマラの存在もあって面白かったが、気になったのは、がんじがらめに複雑すぎる規則だ。マニアはいいけれど、より広い理解を得るためには、規則は単純な方がいい。
◆結果として、その複雑な規則をきっちり読み取って、53周のレースを組み立てたトムスと、そのプログラムをバックに完璧な走りを展開したニック・キャシディーが優勝したが、その素晴らしさと、スーパーフォーミュラの広がりは別の話だ。
◆アメリカの大リーグと日本のプロ野球も、同じような傾向にあるという話を聞いたことがある。フォームを徹底的に極める日本の野球と、感覚で押し切る大リーグ。どらちにも利点はあるけれど、モーターレーシングは、クルマという媒体を使う分だけ要素が複雑なので、競技じたいはできる限り単純化たいところだ。
◆タイヤの規制や、オーバーテイクボタンの使い方など、レースを面白くするための要素を徹底して考えている努力は認めるとして、今回の菅生は、複雑になっただけ大切な何かが失われている気がした。
◆ブランデーのソーダ割り、という呑み方を広尾のクラブで知ってず~っとそれで通していたけれど、ブランデーは、ブランディグラスでストレートに呑むのが正しいし美味しいことを改めて知って、スーパーフォーミュラも、ストレートなレースになってほしいと思った夜。布団の重さが恋しくなる季節になった。しかし、ブランデーのストレートは効くなぁ。
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