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自工会の会見で章男社長を応援したくなった

2010年、撤退直後、トヨタのレース前線基地、ケルンのTMGのシミュレーションでテストをする小林可夢偉。ここで終わったと思っていたトヨタのF1は、終わっていなかった!?

◆2050年に向けて、カーボンニュートラルの話題がジワジワと広がっている。

◆12月17日に、豊田章男社長が行なった自工会の会見は、内容的には2050年に向けてのゼロカーボンに対して、電動化が果して正しいのかを伝える内容だった。ゼロカーボンに対しては、すでにホンダの八郷隆弘社長が10月2日に意見を伝えていたが、モーターレーシングの立場から見て、その方向と見え方はまったく違うものに感じた。

◆八郷隆弘社長の会見で感じたのは、2050年にゼロカーボンにしなければならないというだけの内容だったが、“誰かが創った原稿を読んでいる”というイメージがあった。それに対して、豊田章男社長は、データを確認しながら、自分の言葉で、これでいいのか、という思いを語っていた。

◆八郷隆弘は、ホンダ本社でホンダの立場を述べたものであり、豊田章男社長は自工会会長の立場からの会見だったので、単純比較には無理があるが、その要素を入れても、明らかに違って映った。この違いが何を意味しているのか。以前から言っている『ホンダのトヨタ化とトヨタのホンダ化』が脳裏を過る。

八郷隆弘社長のコメントは、型通りで人間味が感じられないまるで以前のトヨタの発表のようだった。豊田章男社長の会見は、例えば、1986年に始まったホンダF1第二期の桜井淑敏総監督の挨拶を彷彿とさせた。

◆さて、その豊田章男社長の「果して未来は電動化だけなのか」という会見に心を打たれ、キーワードを拾い上げて解説したいと思い、トヨタ自動車広報部にその企画を投げてみた。しかし、「そちらでご自由に展開をお願いします」とケンモホロロ。「豊田章男社長の会見は、それ以上でも以下でもありませんので」。

◆いやいや、それ以下はないとして、実に盛りだくさんの“それ以上”を伝えないと、豊田章男社長の会見の意義が半分も伝わらなくてもったいない。豊田章男社長が言いたかったのは、単に2050年にゼロカーボンになる、ということだけではなかったからだ。

◆モーターレーシングの世界では、F1もWECも、さらにはスーパーGTもとっくにハイブリッド化に進んでいる。モーターレースを自ら楽しみ、実践して体感している豊田章男社長は、それを体感し、提言した。その提言は、市販車のクルマの本質的な未来を俯瞰から見て伝えようとしているように取れた。

◆しかし、残念ながら、モータースポーツを理解していない例えばトヨタの取締役に、F1もWECやWRCも、ハイブリッド・システムを高度に開発して闘っているが、それが伝わっているとは思えず、豊田章男社長の『孤立』を感じて、なんとも複雑な気分になった。

◆例えば、1960年代にヨーロッパのF3やF2で活躍し、日本のモータースポーツを牽引した生沢徹さんが展開している『Tetsu Ikuzawa’s life style』は、1960年台にえも言われぬエネルギーがあったことを伝えている。それを、その時代を知らない世代に伝える方法がないものかと模索していたところだったので、まずは、豊田章男社長に生沢さんのこのブログをお読みいただきたいと思った。

◆豊田章男社長が自工会のサイトで行なった提言は、モーターレーシングの本質を伝えるきっかけとして、申し分ない内容とタイミングだった。そのチャンスを活かし、そのムーブメントをもっと大きくしたいと思う。

photo by [STINGER]

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