F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

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無冠の帝王

「国光はコクピットで狂ってしまったかのようだった」という伝説のフレーズにしびれた1972年日本グランプリTS-bのワークスGT-R。

◆高橋国光さんが亡くなった。3月16日は、とても哀しい日になった。

◆親父の影響で、ガキの頃からクルマに興味があったが、自動車レースに嵌まったのは1966年。高校生になった頃からだった。最初にファンになったのがニッサン・ワークスの高橋国光さんだった。

◆『無冠の帝王』というフレーズもかっこいいと思った。タイトルを取れていない、という意味で、褒め言葉ではないのに。いや、無冠なのに帝王なら、結果として讃える言葉だ。

◆前にも書いたが、故横越光弘さんが、私が入社する5年前の山海堂『auto technic』のレポートで、1972年日本グランプリのTSレースのGT-Rvsサバンナの激戦をこう書かれていた。今とは逆周りの富士スピードウェイの300Rからヘアピンに駆け上がってくる高橋国光さんのGT-R、「国光はコクピットで狂ってしまったかのようだった」。鳥肌がたったのを思い出す。

◆しかし、コクピットを降りた国さんは、とても優しい方だった。いつだったから、新宿駅南口を下った明治通りの横断歩道を渡っていたら、「ヤマグチさぁん」と呼ぶ声。振り返るとホンダ・レジェンドの窓をあけ、国さんが微笑んでいた。偶然を喜んでくれたその笑顔がとても嬉しかった。

◆輸入車試乗会で、ポルシェ・ボクスターの助手席に国さんを乗せて走ったことがある。仲間から、「運転する国さんの横に乗ったことはあるけれど、国さんを横に乗せた人って、いないんじゃないの!?」と感心された。レーシングドライバーの多くがそうであるように、クルマに乗ると、まずは自分で運転するからだ。

◆ついでに、その時、会場の大磯ロングビーチの駐車場から海沿いのハイウェイに入ってフル加速した時の一言も、国さんらしかった。「どぉしょもないねぇ」。スポーツカーの加速をこんなに見事に現したフレーズを聞いたことがない。

◆いまはただ、、ご冥福をお祈りします。安らかにお休みください。

◆国さん、ありがとうございました。合掌。

photo by [STINGER]

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