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	F1で巡りあった世界の空。山口正己ブログ

間瀬明さんご逝去

オートテクニック編集長になった1985年に、就任祝いとしてプレゼントしていただいたショパールの『1000 MIGLIA』。ジュネーブ空港で、いかにも欲しそうな目つきでショーウィンドウを眺めていたのをご覧になっていた間瀬さんから、六本木のSeLのオフィスで「これ」と渡されたときを思い出す。

◆初めて海外のF1現場を経験した1977年ロングビーチGPで、森脇基恭エンジニアとご一緒のパドックで初めてお目にかかって以来、間瀬明さんには大変お世話をいただいた。1987年に、創刊した世界初のF1速報誌『GPX』は、間瀬さんの存在なしに実現しなかった。その後、一世を風靡する雑誌として認識されたのは、間瀬さんを始めとするサポートのお蔭と改めて思う。

◆当時は、写真をメールで送るという今では当り前の作業が存在していなかったから、毎戦、現地からフィルムを運ぶという、今では考えられない作業の上にF1速報誌が実現していた。そのために、現地の現像所の所在地を調べていただいたり、その運搬をサポートしていただいたり、それ以前に、パスの申請からホテルの手配までお世話いただいき、『GPX』の創刊編集長とは一見一人前に見える私を、文字どおり公私に渡ってサポートしていただいた。F1GPのまさにA to Zを伝授いただいたのが間瀬さんだった。

◆マリオ・アンドレッティの自宅住所や、ヨッヘン・リントの自宅電話番号、バーニー・エクレストンの自宅住所を見せていただいたこともある。それぞれ本人の手書きメモだった。よくぞきちんと保管していたものだと感心したが、それもそのはず、自分が乗った飛行機の機種番号をすべてメモしているという“特技”をお持ちだっだ。

◆スイスの自宅で、キャビアの本格的な食べ方を教えていただいたこともあった。モンツァ近くのレストランで、シェフにチップを渡したのを拝見して、こうして世界中のシェフとの繋がりを作り上げているのかと感心し、本質的なグルメのあり方を教えてくれたのも間瀬さんだった。

◆いつだったろう。多分1980年代にイモラ・サーキットで行われたサンマリノGPの時には、連れて行っていただいたレストランでグラッパを注文したら、老年のボーイが、喜色満面で20種類くらいのグラッパが入ったワゴンを運んできたのに対して、“上等じゃないの”という感じで、片っ端から呑んだ私は、翌日の土曜日の予選は、イモラに行けずにホテルで寝ていた。

◆第一期ホンダF1中村良夫さん、イタリアの重鎮ジャーナリストのフランコ・リニさん、イタリアの若手ジャーナリストのピーノ・アリエービさんなどをご紹介いただき、取材活動の基盤ができた。

◆それ以前に間瀬さんは、1974年に富士スピードウェイで行われたF1デモラン誘致に尽力した。当時F1GPを統括していたFOCA(フォーミュラワン・コンストラクターズ・アソシエーション=F1製造者協会)のバーニー・エクレストンと懇意で実現したのだが、F1デモランは、1976年に富士スピードウェイで実現した日本初のF1GPにつながった。

◆古い読者には、インディ500の解説者としてもお馴染みだろう。そうした側面から日本のモーターレーシングとF1GPを語るとき、キーとなる人物であり、そういうレジェンドに可愛がっていただいたことは、私の自慢のひとつだ。

◆もっとも、その後、“オレだけ”と思っていたそのサポートは、たとえばカーグラフィックの阪編集長などにも同様に行われていたことを知った。最初は若干、複雑な気分だったが、間瀬さんがそうしてモータースポーツに主力を注いでいる雑誌をサポートしたのは、日本のモーターレーシングをレベルアップするためと後々知った。

◆そもそも、1974年のF1デモランじたい、その年に富士スピードウェイで起きた大きなアクシデントに触れた間瀬さんが、日本でのモーターレーシングの安全性のレベルを高めるために、バーニー・エクレストに相談して実現したという経緯があった。まさに、日本のモーターレーシングの今日の礎を創ったのだが、このことは、関係者の多くが知らない事実だ。間瀬さんは、多くを語らない方だった。

◆結果として、そうしたマインドの持ち主だったので、日本ではかなり誤解されていたのも事実だが、改めてこの機会に、間瀬さんの行動を確認すれば、それか誤解だったことが明確になるはずだ。

◆改めて、日本のモーターレーシングに見えない貢献を残した間瀬明さんのご冥福を心からお祈りいたします。間瀬さん、安らかにお休みください。本当にありがとうございました。合掌。

photo by [STINGER]

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