驚愕の噂話–その2
(驚愕の噂話–その1からつづく)
◆そもそも、なぜトヨタが富士スピードウェイの経営に乗り出したかといえば、トヨタのホンダ化である。なんのこっちゃ? 説明する前に、わけの分からないことを言い出している自分の頭を整理しつつ、逆にホンダもトヨタ化していたことも語っておきたい。
◆世の中には浅はかな考えで、「山口正己はホンダ好きでトヨタ嫌い」と勝手に思っている方がたくさんいらっしゃるので。オレは好き嫌いでいっているのではなくて、チャンと理由があって意見を言っている。日本人は、意見をいうと文句と解釈してしまう哀しい教育を受けて育ってしまっているので、ここは若干ややこしいが、そんなことより、トヨタのホンダ化の前にホンダのトヨタ化の話をしておこう。
◆会社は大きくなると、最初に目指した理想や目標をどこかで見失って、結局同じところに行こうとする。ホンダはホンダらしさをなくし、例えばレジェンドをクラウンのように売れるクルマにしようとする。それは無理。たぶん現在、400万円台で買える世界中のクルマの中で、クラウンは一番だ。性能も、コストパフォーマンスも圧倒的。ただ、味がなくて尊敬されるクルマではない、ということを除けば文句の付けようがない。それは置いとくとして、”売れるクルマ”としてみた場合、ホンダにクラウンのマネは絶対にできない。しかし、クラウンが全然持っていない味の無さに着目して、例えばV10を積んだ1500万円くらいするレジェンド・タイプRでも造れば、トヨタには絶対に真似できないホンダらしいフラッグシップカーが生まれる。その話をとあるホンダのお偉いさんにしたら、「それでは売れません」と仰った。悪いけど、いまのレジェンド、売れてんの? いずれ売れないなら、ホンダらしく居直ってまくったクルマを出してください、と言ったら、お偉いさん、力なく笑って話は終わった。たぶんホンダも、F1撤退以前に終わっていたのだろう。しかし、、草葉の陰で宗一郎さんはオレと同じように思っているはずだ。これがホンダのトヨタ化だ。ホンダはホンダでいればいいのに、いや、いなくちゃならないのに、隣の庭がきれいに見えて行く先を見失ったんだな、きっと。
◆で、トヨタのホンダ化である。とある雑誌で鈴木亜久里さんが、スープラのテストをして、「素晴らしいクルマだが、このクルマを造ったメーカーがそれを走らせるサーキットを持っていないので話にならない」と書いた。それを読んだトヨタのとあるお偉いさんが、サーキットの所有を思い立ったらしい。らしいというのは、大筋はまちがっていないが中間を略しているのであえてそう書いておく。で、紆余曲折巡り巡って、富士買収に辿り着くわけだが、ここに非常に不思議なことがある。
(驚愕の噂話–その3につづく)