たったの顔面麻痺・その5 『ラッキー!』
野菜の美味しさや食感に気づいたことより、もっと分かりやすいラッキーなできごとに遭遇する。F1の会場で、左手で頬を抑えてうつむき気味に歩いている私を見て、知り合いが「どうしたの!」と驚いて声をかけてくれる。思ったより人気者だったんだ、と思えたのが最初の発見(笑)。
さらには、「電気系統トラブルなんだよ」というと、相手は心配そうな顔になり、「痛みはないの?」と聞いてくるので、「ありがとう、全然痛くないんだけど、ひとつ問題があるんだよ。それはね」。相手は、「フムフム」と一生懸命病人に耳を傾ける。「なんなの?」。「あのね、キュートな笑顔が作れない」。相手が女性だった場合、多くが安心してか、思わず抱きついてきそうなくらい喜んでくれる。さらに、中には、「オ~、ボーイ」と言ってほっぺたをスリスリしてくれる美人もいたりするのだ。顔面麻痺にならなければ、彼女が私の頬を摩ってくれるなんて事態には絶対にならなかったと断言できる。