F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

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	F1で巡りあった世界の空。山口正己ブログ

来年は、富士スピードウェイの50周年

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WECのセフティカーはアウディだったけれど、1976年の雨のレースを引っ張ったペースカーはBMWだった。

◆高校2年生で初めて日本CAN-AMを見物して度肝を抜かれ、3年生の11月23日、二度目の日本CAN-AMの見物に行くか、エスカレーター式の明星大学の内部試験を受けるか若干迷った末に日本CAN-AMを選んだ結果として2年間浪人することになり、やっと裏口入学した千葉工業大学を5年かかって卒業するまでに、富士スピードェイには何回通ったことか。

◆特に、水曜日から金曜日までやっていて300円で入れたグラチャンの公開練習には狂ったように通いまくった。3日連続で行ったこともあった。行きは河口湖まで開通した中央道に400円払い、300円で入場して300円のカレーを食った。ピッタリ1000円。300円は、当時ラーメンが100円くらいだったから今なら1500円てところと思うが、それでピットまで入れたのだから、好青年(←オレ)が狂うのも分かろうってものだ。

◆実家は神奈川県最北端の、いまは緑区という酔狂な名前になり下がった相模湖町。そこからは、距離的に言って電車代も時間も、「鈴鹿サーキット」は海外と同じ域外地で、憧れの地だった。好青年(オレですよ)としては、親近感の持てる富士が好きだったのである。

◆その富士スピードウェイが来年50周年を迎えることを思うと感慨深いのだが、最近、若干残念なことに思い至った。

◆そもそも富士は、三菱地所のビジネス感覚でスタートした。第一、あの天候不順のところをオーバルコースにしようとしたところが、なんともだ。オーバルは、ちょっとでも雨が降ったらレース中止。要するに、当初の計画がいかにズサンだったかを証明している。並々ならぬ熱意に支えられた、という側面はあった思うし、後から言うのは簡単だけれど、富士と鈴鹿は、”スピードウェイ”と”サーキット”という名前の違いだけでなく、その後経営に乗り出したトヨタと、自ら創ったホンダというだけでない大きな違いがあることに気がついてしまったのだ。

◆歴史的には、第一コーナーのバンクを建設した段階で、スターリング・モスのアドバイスでオーバルをやめて通常のロードコースにしたという説もあるけれど、もしかすると途中で天候のことに気づいたのかもしれない。

◆ちなみに、鈴鹿サーキットに対して富士スピードウェイという名前が着けられたのは、アメリカのインディアナポリスやデイトナのオーバルを模した名残りだが、今の富士には、バンクはもちろん、高速の260Rも最終コーナーもなくなって、スピードウェイとは呼びにくいものになっている。

20131020_富士WEC.jpg

◆先日の雨で結局レースができなかったWECジャパンを見物して思ったのは、時代が進むことへの複雑な思いだった。富士スピードウェイは、トヨタが経営に乗り出して、F1を呼ぶために改修工事が行なわれ、確実に安全なコースになった。そのことは、2007年に富士に戻った日本GP終盤、最終コーナーでフィリッペ・マッサが、コースからはみ出してロベルト・クビツァと演じたバトルを観ても明らかだった。これは富士に限らず、鈴鹿の130Rも同じだが、現在のコースは、コースを外れても、何事もなかったように戻ってこられる。コースをはみ出したら終わり、というスペクタクルな場面が観られなくなった。ぶつかるのは留めるべきとしても、ハマッテ終わりというリスクがないのもなんとも複雑だ。

◆1974年に、初めてF1が走るのを拝んだのも富士だった。1976年に初めて富士で行なわれた日本GPでは、最終コーナーでタイヤを半分ダートに落してもそれをコントロールして走るジョン・ワトソンにシビレたが、今では、デフの制御も進化して、縁石からはみ出してもなんてことがなくなった。

◆マシンの技術が進化して、コースの安全性が高まるのはいいことだが、1985年のWECは、かなりの雨の中で強行された。そうすることがいいことだとは言わないし、安全が優先されるべきであることに異論はない。しかし、1985年に強行できて、今回はそれができなかった、というバックボーンに、なにやら若干寂しいモーターレーシングの様変わりを感じてしまった。

◆最近はダビング技術が進化して、You-tubeやフェイスブックで貴重な動画が簡単に観られるようになった。1969年に富士スピードウェイで行なわれた日本GPの映像もそのひとつだ。好青年(オレですね)は、このときのレースがど真ん中なので興奮しまくりで拝見したが、フと、息子たちが観たらなんというかと思って観せてみた。意外な反応だった。

◆ニッサンR382やトヨタ・セブンやポルシェ917を昭和臭い、と言うと想像していたところに、”面白い”という意見だったからだ。理由を訊いて納得した。「だって、危なっかしいから」。このひとことにレースの真髄が見えた。重要なのは、「危ない」ではなくて「危なっかしい」ことだ。

◆天候不順の地域としての富士は、危なっかしいではなく、危ない立地条件と言わざるを得ないけれど、改修されたコースは、危なっかしさがまったくない、安全なコースになっている。にもかかわらず、WECは、レースができなかった。一体レースはこれから、とこに向かっていくのだろうか?
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