F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

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	F1で巡りあった世界の空。山口正己ブログ

そのうち春はやってくる

右は、レッドブルがF1の現場で配布していたレッドブルテン。実は、ホンダの広報部にいたスタッフが、『GPX』を本部に提案してして創った、紙まで一緒。パテントはもらっていない(^^ゞ 。
左は、『GPX』が真似、体よく言えば“参考にして”グランプリインターナショナル。素晴しい本だった。そもそも、こっちが真似して始まったm(_~_)m。

◆1986年のちょうど今頃、その計画は佳境に入っていた。

◆『GPX』という雑誌の創刊の企画だ。

◆当時、F1GPを扱うレース誌は、私が編集長を務めていた『auto technic』を含み、月刊か隔週刊。今のようにネットが活用できない、というか発想に浮かばない時代、F1を紹介するには、月刊では遅い。さりとて、週刊では都合が悪い。

◆それはF1GPが、ある時は連続週で、またある時は2週間開いて開催されるからだ。要するに不定期になるから、基本は週刊だけれど、ある時とないときに発行しなければならない。すっとん虚な発行パターンに、印刷会社はなんとか説得できたけれど、問題は書店に分配する“取り次ぎ”の承認だった。

◆さらに流通で致命的だったのか、“デカさ”だった。その後、その大きさが話題にもなり、紙質などをこだわったことで人気が出たけれど、当初は、書店から“薄くてでかい”という理由で、平積みはスペース的に無理、棚に立てると手前に垂れ下がってくる、中とじで弱い紙だったので中頁が破れて外れてしまうなどの弱点もあった。決まったサイズの箱で運搬していた取り次ぎでは、B4サイズというイレギュラーな大判が問題になった。

◆しかし、そうした苦労を含めて、ファン拡大を願ってを発行を思い立った『GPX』は、思い出が山積みされた本だった。

◆創刊後の1987年ブラジルGPのための現地取材は、自費でいくという暴挙。自分の好きなモノを観に行くのに、会社の金で、という気になれなかったからだ。

◆問題は2戦目以降だった。すでに貯金はブラジルで使い果たした。ところが。

◆晴れて創刊号が完成。見本誌が届いた時に社長室に呼ばれ、「君は“世界観のある本にしたい”と言ったけれど、写真がテレビの画像を転用しているのでは、臨場感も世界観もない」と言われた。こんなもの、辞めてしまえとと叱られるかと思ったが、社長の言葉は、「世界観を出すために、全戦現地に行きなさい」。

◆男気のあるO社長だったことに救われた。辞表をポケットに入れていたのに。

◆その後、『GPX』が軌道に乗り、モータースポーツ雑誌としての目標は実買5万部だったが、3万7千部からスタートした『GPX』は、半年後の日本GPでは、20万部を突破する大ヒットになった。『少年ジャンプ』が500万部売れていたから、一般的には細かい数字だけれど、日本のモータースポーツの認知度からして、悪くない数字だった。

◆ちなみに、翌年は、セナ、プロスト、マンセル、ピケという四天王の活躍と、ホンダ・パワーの躍進で注目度があがり、“シーズンオフ号”や“カレンダー号”の企画も当たって、1冊あたり2000万円、年間2億円の粗利が出た。

◆これに気をよくして調子に乗って、WRCの『rally X』とF3000(現在のスーパーフォーミュラ)を速報する『J-FORMULA』を発売した。しかし、世の中そうは甘くなかった。F3000開幕戦が雨で中止が当日に決まった。当然、『J-FORMULA』は、広告頁を含め、あとは決勝の頁を創るだけのところまで準備が出来上がっていたけれど、書けるのは“中止の経緯”だけ。売り上げは壊滅状態で、その後も雨→中止が続いて、『J-FORMULA』は沈没した。

◆その後、私が山海堂を退社した後に、身売りして、時代の流れにもみ消されるように消滅した“暴挙の”『GPX』は消え、唯一、『rally X』だけが、当時の後輩の手で、ネットで継続している。

◆周囲の人たちのサポートで、貴重な体験ができた。もう一度やれと言われても、残念ながら“暴挙”に突き進むエネルギーが老衰して無理だ。とは言っても、“ファン拡大”はまだまだ発展途上。探せば何かあるはず、と古いムシがムズムズしている今日この頃。

◆寒さが厳しくなっていく今思いだしたのは、“冬来りねば春遠からじ”という英国の詩人シェリーが、「西風の賦」で綴ったらしい名言だ。我ながら懲りない奴でゴメンナサイだけれど。

photo by [STINGER]

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