しっかり者
◆小林可夢偉に二度びっくり。日本GPでは、8カ月ぶりのF1を、1時間前に突然言われて「もっと早く言ってよォ、でした」と笑い飛ばして10時からのフリー走行でマシンに飛び乗り、雨の鈴鹿という簡単ではないコンディションの中で、チームが驚くデータと的確なコメントを伝えた。
◆そして今回のブラジルは、「1時間半前にいきなり言われたよりはなんぼかマシですわ」ととぼけたコメントを発しつつ、楽しくてしょうがないという表情で初日を進め、正式にF1ドライバーとしてデビューした。
◆今回も、テクニカルなインテルラゴスであり、さらに不安定純な天候の中だったけれど、一度コースを飛び出しながら、初めて履くオプション(柔らかい方の)・タイヤと未経験の軽い燃料、さらにはTF109をドライで走らせるのは初めてという悪条件にも関わらず、ヤルノ・トゥルーリのコンマ25秒落ち。
茶目っ気もたっぷり。
◆その結果を見て、意外だったのは、トヨタ関係者の点数が辛かったこと。もちろん金曜日のことにぬか喜びはいただけないが、「ポイントだ」、「Q3だ」と、新人に無用なプレッシャーをかけるより、「なにより楽しんで走っているのが素晴らしい」とどうして言わないのか不思議だった。そうした気遣いがトップチームの代表者や関係者には普通にあるものだ。チームは、ドライバーを護るコメントをするのが当然の流れだ。
◆山科チーム代表は、「Q2に行ったら合格、Q3なら褒めて上げる」とおっしゃった。新居章年技術コーディネーション担当ディレクターは、”難しい条件の初めて尽くしの中での今日の出来は?という質問に「優良可の良ですね」とさらりと答えた。
◆小林可夢偉本人は「今日は60点」と冷静に自己採点しているが、私は、今日に限れば100点満点。F1のレベルからして、マシンも壊さず、マージンを残しつつ、さらに最後のアタックで雨が来てアタックを中止したという条件の中で、先輩J.トゥルーリのコンマ25秒落ちがどうして”優”ではないのか不思議だった。
◆周囲に、”見守る”という気遣いが欲しかった。23歳が、何百億円かの資金をかけて作ったクルマに乗って責任を一身に受けているんだもの。しかし、スイスの友人が言った「サラリーマンにそれを理解しろといっても無理じゃないの」、という言葉に返す言葉がなかった。かくてガックリして時差ぼけは最高潮(笑)、でもないか。
◆もうひとつ、小林可夢偉にびっくりしたのは、久々に聞いた英語力。女性レポーターの英語の質問に、リラックスして的確に必要なことをてきぱき答えるのを見て、「日本語よりいいコメントだった」と冷やかすと、嬉しそうに表情を崩し、「あの人、目がきれいだったですね」だと。しっかり見てやがるわ。
◆可夢偉のことだから、サラリーマン諸氏の対応も気にせず、楽しんでくれるはずなので、余計なお世話かも。それにしても、下の写真、しっかり見すぎダゾ!