魂
◆お袋と妹、女房を乗せて向島の斎場。弟嫁ヨリちゃんの妹の告別式。妹の佳子ちゃんには面識はなかったが、癌が発覚した3年前から、とても明るくてやさしい娘だ、と弟から聞いていた。あんなにたくさんの参列者が泣く告別式は見たことがない。やさしい彼女の享年34歳という若さと、3歳に満たない愛娘の存在が悲しさを加速した。一人一人の焼香の合掌する時間が、それぞれの無念を伝えるように、ふつうの告別式よりずっと長かった。
◆悲しさや辛さに序列があるわけではないけれど、一番哀しいのはご両親とヨリちゃんだと思った。気丈なヨリちゃんが、声を殺して泣くのを見て、たまらない気持ちになった。ヨリちゃん、早く元気になってください。
◆一番辛いの旦那さんではないかと思った。そして、ふと、ママの死を理解できずに、パパと同じ焼香をするのだと駄々をこねる娘さんを案じた。亡くなった佳子ちゃんに一番近い存在の彼女は、やがて、お母さんがいないことに気がついて辛い想いをする時が来るはずだ。でもその辛さは、母親の存在を感じることであり、ならば佳子ちゃんの魂は、彼女の心の中にずっと生きていることになる。安らかに眠りについて、みんなを安心させてあげてください。合掌。