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	F1で巡りあった世界の空。山口正己ブログ

ガイジンに舐められない方法

◆その昔(と言っても8年前だが)、ベストカー連載に書いものだが、そんなことがあったなぁと懐かしかったので。

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◆タイヤ交換は今やF1の風物詩だ。木曜日のピットでは、タイヤ交換の練習がルーティン行事になっているが、タイヤ交換の練習は、1990年頃に始まったのだが、そのキッカケはホンダのエンジニアの一言だった。

◆マクラーレン・ホンダの時代のあるレース、レースを有利に進めていたマクラーレンが、ピットのミスでレースを失った。レース後、マクラーレンのエンジニアがホンダのK内エンジニアに一言。「いいエンジンを作ってくれれば、次は勝てる」。ホンダのK内さんは、日本人を見下したその一言にカチンときて即応した。「お前らのミスじゃないか、エンジンの心配をしてる暇があったらタイヤ交換の練習でもしやがれ!」。マクラーレンのエンジニア氏、ムッとしてその場を立ち去った。

◆そして迎えた次のレース。木曜日のパドックに見なれない光景があった。マクラーレンがタイヤ交換の練習を始めたのだ。流石F1、非は認めて即座に対応したのだ。そして、もう一つ、流石F1という光景が翌日の金曜日に現れた。フェラーリやウイリアムズも、右へ習えでタイヤ交換の練習を開始。それが定着して、タイヤ交換の練習は、晴れて当たり前の習慣になるのだった。

◆マクラーレンのエンジニアにエンジンのことを言われたホンダのK内さんがそこで黙ったとしたら、その後もイギリス人エンジニアは”日本”をナメ続け、自分たちのミスをエンジンに責任転嫁する姿勢を変えなかったかもしれない。毅然とした態度で意見を言ったことが、国際的な舞台で協力体制を確立することに大いに役立った、というワケだ。つまり、同じ目線、という思考回路がF1では重要、ってことである。

◆ついでに、随分とスケールは違うが、似たような話をひとつ。こちらも、タイヤ交換の練習が始まった1990年頃。当時、私が編集長だったF1速報誌の『GPX』が売り上げを伸ばしていた。とあるグランプリの週末。ポルトガルの年配のジャーナリストが、「いい原稿がある」と言ってきた。

◆「セナのインタビューだ。凄く面白い。1000ドルでどうだ」。言われた瞬間、カチンと来た。「面白いかどうか決めるのはコッチだ。もちろん、値段もだ!」。当時、GPXは絶好調の最盛期で予算はタップリあった。だが、当時のレートの10万円でその原稿を買うと、確実に翻訳の代金がそこに重なる。それはいいとしても、日本人ならニコニコして言いなりになるだろう、という相手の態度が気に入らなかった。いつもヘラヘラしている日本人(私です)にそう言われたPC氏はたじろいで、「わ、分かったよ。見てもらって面白かったら使ってほしい」と言い直した。

◆結果的にその原稿はGPXに掲載されたが、代金は言い値の半額。しかし、それでも当時としては悪くない原稿料だった。仮に、払えるから、と言われた通りの金額で原稿を払ったとしたら、次からの原稿料の水準ができてしまい、以後ず~っと高い原稿料をはらわなければならなくなり、PC氏は日本人はチョロイ、とずっと思うことになっただろう。

◆時にはピシャリとしなくては。調子に乗ると嫌われるのでそこには注意しつつ、ということで。

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